アセアンのリアルな生活者の姿を追う #08

日本とは違う?アセアンのリアルな生活から見えてきた「スマートホーム」普及の背景

2. 「毎日のルーティンは、“ひとこと”で解決」(シンガポール/男性29歳)
SAMSUNGのスマートロック、XIAOMIのロボットクリーナー。Google Homeが複数台。
 IT企業に勤めるインド系シンガポール人の男性は、スマートスピーカーに様々なルーティンを頼んでいます。例えば朝起きて「おはよう(”Good morning.”)」と話しかけたら、スマートスピーカーは6つのアクションを行います。

 スマートフォンのサイレントモードをオフ、今日の天気や交通状況、スケジュール、リマインダ、スマートフォンから流れるメディアの音量調節…コマンドを追加すればできることをさらに増やせます。
 
スマホ上に登録してある「ルーティン」のコマンド一覧。IFTTT(イフト If this then thatの頭文字より)というサイトで自ら入力と出力を設定するコマンドを作成。
 「不便さはテクノロジーで解決できる。これで暮らしがずっと楽になった」と語ります。より便利に、より楽に。毎日決まっている面倒な生活行動をIoTに任せたい、という欲求は尽きません。

3.「外出時、30分に1回はスマホで家の安全を確認」(フィリピン/男性22歳)
雑然としたお家の中で、CCTV(監視カメラ)が常時目を光らせている。
 家族と飲食店とクリーニング店を営んでいる彼の自宅には、4台のCCTV(監視カメラ)が設置されています。中国メーカーのCCTVは安価で、映像はいつでもスマートフォンのアプリ経由で確認することができます。

 安全とは言い難い地域では、「不在時の家の状況」は心配事のひとつ。

 「CCTVを設置してから、外出時に30分に1回はスマホで映像を確認します」と語り、不審者はいないだろうか、泥棒に入られていないだろうか、と気に揉む時間が減ったと言います。「安全になったのが嬉しい。家族で旅行に行けるのも良い」と、笑顔を見せてくれました。

4. 「メイドに頼む手間が減ってストレスフリー」(タイ/男性39歳)
SAMSUNGのロボットクリーナー。
 家庭内にロボットクリーナーを導入した男性は、「”Tech Helper”=機械の手助け」の利便性について、アセアンにおける"Human Helper”の代表でもあるメイドと比較して話してくれました。

 「メイドに仕事を頼む場合、その人に合わせて教え方や伝え方を変える必要があります。相手も人間なので、日によって機嫌が変わるし、仕事のできにはムラがある。盗難などの心配もあります。でも機械なら、一度教えれば良いし、仕事のできは安定的だし、気兼ねなく仕事を頼むことができて、とてもストレスフリー。もっと機械の手助けに頼りたいです」



 IoTは今後ますます「人に頼むことの面倒さ」を軽減してくれることでしょう。
 

生活者が享受するアセアンらしいIoTのメリット

 一言で「IoTの普及」と言っても、日本とアセアンの生活者では、取り入れる動機やベネフィットの感じ方が違うことが分かります。

 「家の安全性を確保し、安心を得ること」や「メイドに頼む面倒さ、気苦労を解消してくれる」など、アセアンらしいIoTのメリットと言えるのではないでしょうか?

 また、安価な上、取り付け方や接続方法が簡単な中国メーカーの商品やアプリ、テレビ・スマートフォン・家電のシームレスな利便性で牙城を築く韓国メーカーなど、IoT領域から、中国・韓国メーカーの存在感が高まっている様子もわかります。
 

【調査概要】

調査手法
訪問調査
対象者
20歳-49歳の男女、SECミドルクラス以上
調査エリア
タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピンの全国
サンプル数
各国6サンプル、計36サンプル
調査実施月
18年9月~10月
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