外部アドバイザーと内部プロモーターのタッグで、プロモーション先進自治体へ。
昨年末、全国シティプロモーションサミット2018が佐賀市で開催された。佐賀市が主催となり2日間で約1000名の自治体関係者たちを集め、セミナーや情報交換会などが行われた。私はその基調講演を行ったのだが、大きな会場が聴衆で埋め尽くされ「何もなか」と言っていた5年前には想像もし得なかった光景に、胸が熱くなった。
佐賀市のシティプロモーションは2015年の1月に第1弾を発信し、2018年までに10プロモーションほどを仕掛けてきた。それら活動の一部は「進撃のシティプロモーションガイド」という市内に置かれた観光ガイドにまとめられている。佐賀市の観光地や特産物の紹介などをプロモーションの内容に沿って紹介しているなかなかユニークな仕立てだ。
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突飛なアイデアが全てカタチになったのは、南雲室長のおかげと言っても過言ではない。私には見せなかったが内部調整など苦労をされたこともたくさんあったと思う。この場を借りて改めて感謝申し上げたい。そして、これからも内外での意思疎通と連携を大切にする自治体と組んで人を動かしていきたいと思う。
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次から次へと出てくる地域ならではの魅力と湧き上がるアイデア。
私たちが初めて手掛けたシティプロモーションは2015年1月に公開された「WRSB」だ。これは佐賀市に隣接する有明海の泥の中に住むエイリアンのような魚「ワラスボ」をフィーチャーした企画で、その見た目のインパクトを話題にするため「地球外生命体WRSB」としてミステリー映画のトレーラームービーのような動画を配信した。
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しかし私はワラスボを初めて見た瞬間に受けた衝撃を信じ、南雲室長とともにこの企画を敢行した。結果、動画が話題となり、地元企業やクリエイターがワラスボグッズをつくり始め、佐賀市の道の駅や空港などでワラスボのお土産コーナーができるほどになった。
もちろん動画には市長が登場し、迫真の演技でトップセールスを果たしてくれた。そして、この動画をきっかけに、市長は新しいプロモーションを楽しみにし、積極的に出演してくれ
プロモーション第2弾は有明海の干潟に住む「ムツゴロウ」と「シオマネキ」に注目した。有明海を訪れた時にこの2つの生き物が干潟の上で争っているように見えたことから干潟の上のガチな戦い「ガタバトル」と名付け、干潟に足を運びバトルを見に来るようなツアーへとつなげた。2つの生き物をヒーローにした動画も作成し、動画再生回数でもバトルの仕組みを入れ込んだ。干潟への観光客が前年比150%になるなど、何もない干潟をアトラクション化することに成功した。
また、こんなユニークなニュースもあった。2015年6月、佐賀市に世界文化遺産が誕生した。三重津海軍所跡というもので、地中から大正時代の木製のドライドッグ(船の修理場)が当時のまま発掘された。しかし、世界遺産登録のために現状維持を余儀なくされ埋め戻され
つまり、この世界文化遺産は地中にあり肉眼では見えないのだ。そこには原っぱが広がっているだけなのだ。私はこの話を聞いた時に、何も知らずに訪れた人は怒るでしょう!と思った。南雲室長も同意見で、この状況を逆手にとってPRしようと考え「みえない世界遺産、みえつ」というフレーズとともに福岡などでCMを流しプロモーションをした。結果「#みえない世界遺産」という新たな価値をつくり多くの観光客がSNSなどで発信した。
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動画だけではなくプロダクトをつくってプロモーションしたこともあった。2017年2月に発表した「名刺のりプロジェクト」は佐賀海苔をPRするために海苔の名刺をつくり、市長を含めた地元の名士たちに配ってもらうというもの。50人の名士たちが1ヶ月で100枚の名刺を配り合計5000枚の「名刺のり」が配られた。このプロモーションは特に地元で大きな反響を呼び、なぜ自分は名士に選ばれないのか?どうやったら手に入るのか?などの声が殺到した。
そこで、追加予算を捻出し、誰でもオリジナルの「名刺のり」を作れるサービスを立ち上げた。この試みは個人だけでなく企業側にも届き「ほっともっと」はtwitterのフォロワー10万人突破記念キャンペーンで「名刺のり」を起用した。
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見ているだけで涎が出そうな佐賀牛を目の前に、ふとある仮説がよぎった。この瞬間、脳内に幸せホルモンが出ているのではないか?と。牛肉を食べると脳内にドーパミンが分泌され脳が幸せを感じるという事実が実在していたからだ。
そこで、脳科学者の第一人者である茂木健一郎氏に「サシを見るだけで脳が幸せになる」という新事実を実証してもらい、様々なプロモーションを展開した。これにより、佐賀市のふるさと納税返礼品の佐賀牛関連商品の注文数はプロモーション後、15倍に伸び今も増加し続けている。
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