話題化で興味を持ったユーザーをすくい上げる工夫


 そして3つ目の仕組みが「後から見ようと思っても、すぐに追いつける工夫」だ。

 「あなたの番です」のような謎解きドラマでの途中参加は、圧倒的に不利に思える。それでも私が楽しめているのは、ネット上に考察まとめがあふれていることと、そしてYouTubeやTverにあるダイジェスト動画のおかげである。

 ダイジェスト動画は、ドラマの各話が5分程度にまとめられ、これまでのストーリーを1時間以内で追うことができる。ネット上に考察の動画やテキストが溢れているのは理解できるが、番組サイドが公式にダイジェスト動画をつくってYouTubeやTverで配信しているのは、視聴者に対するホスピタリティが高いと感じる。

 現代は、話題になっているドラマだけを後から追いかけて見ている人も多いのではないだろうか。私の場合は、TBSの「アンナチュラル」やテレビ朝日の「おっさんずラブ」がそうだった。古くはTBSの「半沢直樹」も回を追うごとに視聴率が伸びたドラマのひとつだったが、私もダイジェスト動画を見て追いかけ視聴したことを覚えている。

 TVerが普及したことで、後からスマホで見られるようになったが、さらにダイジェスト動画によって過去の放送をさかのぼって理解できる状況が整いつつある。

 これら2つの仕組みを掛け合わせることで、随時話題化されたコンテンツから流入してきた人を無理なく視聴者に変えていけるのである。


 

現代も強力なエンターテインメントであり続けるテレビドラマ


 現代の映像作品は、様々な工夫が施されている。

 我々の視線がソーシャルメディアやネットコンテンツに奪われているならばと、インターネット上でこれまで提供してこなかった素晴らしい情報を無料で提供してくれているし、タイムシフト視聴が多いならばと、TVerで後から見ることができる視聴環境を整えてくれてた。さらに、ドラマの本編を視聴する時間がないならばと、ダイジェスト版をYouTubeで配信してくれている。

 たしかにNetflixやAmazonプライムビデオが普及する中で、「放送中のドラマ」をライブで見る理由を失っている人はどんどん増えているのかもしれない。しかし、Twitter上の反応を見ていても、ソーシャルメディア時代のドラマも間違いなく面白いし、それはいまだに強力なエンターテインメントであり続けていることがわかる。

 「テレビドラマは時代遅れだ」と切り捨てているのは、中途半端な大人だけかもしれない。実は若い人は、いまだにテレビ番組を楽しみにしていて、視聴方法や興味を持つきっかけが変わっているだけなのである。

 新興サービスだけに閉じこもっているだけではなく、素直にリッチなコンテンツに乗っかって見ることができたならば、「進化し続けるテレビドラマ」を自ら実体験できることは間違いなしである。