1月10日、サンフランシスコ発のスニーカーブランド「Allbirds(オールバーズ)」が東京・原宿に日本1号店をオープンした。Allbirdsはサッカー・ニュージーランド代表として活躍したティム・ブラウン氏とバイオテクノロジーの専門家であるジョーイ・ズウィリンジャー氏が2016年に創業。米タイム誌で「世界一快適」と評された履き心地も然ることながら、環境に配慮した素材を使用しD2C(direct to consumer)ブランドの代表としても話題を集めている。Allbirds日本法人 代表の竹鼻圭一氏、マーケティング責任者の蓑輪光浩氏に日本進出の背景や今後の戦略について聞いた。
トップマネジメントが日本に深い理解、満を持しての進出
——2020年1月、このタイミングで日本に進出した背景からお聞かせください。
竹鼻 創業者であるジョーイとティムは、かねてより「日本に進出したい」と考えていたようです。もしかしたら、すでに進出している中国よりも早いタイミングだった可能性もあったのですが、日本の消費者の審美眼は世界的に見ても高いため、「正しい方法・正しい場所で満を持して進出したい」という考えから時間が掛かりました。
さらに、この間に日本市場でD2Cを展開する環境が整ってきましたし、サステナビリティという視点でも機運が盛り上がってきたと思います。特に若い人たちが「自分たちの問題として未来を考えよう」としているので、Allbirdsがその一助になれればいいですね。
——日本におけるターゲットは、どのような層になると考えていますか。
竹鼻 ターゲットは「20~30代の男女で、生活に対して前向きで新しいことに貪欲にチャレンジしたいと考えている人」です。しかし、それに限らず日本全体にアピールして、皆さんの生活をより良くするためのブランドでありたいと思っています。
——日本で受け入れられるために、特に大事だと考えているポイントは何ですか。
蓑輪 まずは我われが日本について理解することが大事だと思っています。幸いにも本国のトップマネジメントが日本に対して深い理解を持っていることは、アドバンテージです。ジョーイは過去30回ほど日本を訪れて10年近く日本商社との仕事に携わるなど、日本をとてもよく知っているんです。また、海外展開を統括責任者は元アンダーアーマーでアジアを見ていた経験があるんですよ。
竹鼻 外資系企業はともすれば「本社vs各国」といったTHEYとWEに分かれてしまいがちです。しかし、今のところ我われはひとつのチームとして取り組めています。D2Cという観点からみてもAllbirdsはお客さまと直接対話をして毎日のように商品を改良していて、お客さまとブランドではなく、同じ人間として向き合っていると考えています。これは本社と日本との関係にも似ていると思います。
——Allbirdsのビジネスモデルを通して、D2Cのメリットはどこにあると考えていますか。
竹鼻 D2Cの良さは、お客さまの声を反映した商品改良をスピーディーにできて、お客さまに寄り添うビジネスができること。私はかつて卸売や小売向けのホールセール(法人の大口顧客に対する営業)にも携わってきましたが、例えば日本では自社でEコマースを展開していても法人の取引先を優先させてしまうんです。
それに卸売りの場合、シーズンごとにこれくらい売らなければいけないという目標があり、その達成のためには常に新商品を出す必要があります。なので、せっかくお客さまから既存商品へのフィードバックをいただいても、新商品が続々に出てくるので、それがあまり重要ではなくなってしまうんですよね。
また、価格についても中間マージンを乗せなければならないので最終的な値付けも高くなるし、Eコマースでお客さまにサービスすることも意図的に抑制してしまいます。ホールセール中心ではどうしても取引先を優先させてしまって、コンシューマー中心にならないんですよ。
蓑輪 D2Cはつくった人がほしい人に商品を届ける「潔いビジネス」ですよね。私はNikeにいたときに、ソールの種類からカラーまでをお客さんがカスタマイズできる「NIKEiD」を担当していたのですが、これはWebでお客さんの注文を受け付けて工場から直送する仕組みを採用していたので、「日本初のD2C」と言えるかもしれません。そのときも大手シューズチェーンから「何で直接売っているんですか」と問い合わせがきたことを覚えています。