ネガティブなエネルギーをポジティブに変える
2日目のキーノートでは「日経エンタテインメント!」を創刊し、編集長としても有名な日経BP 総合研究所 客員研究員の品田英雄氏が「話題のつくり方と育て方~そのヒットは偶然ではない~」をテーマに登壇しました。
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モデレーターを務めたJTB 執行役員ブランド・マーケティング・広報担当 兼 CMOの風口悦子氏と掛け合う形で、現在における話題化のキモは「消費者が受信者であり、発信者である」という点を強調し、「ぼんご系おにぎり」や「anello 口金型リュック」など、さまざまな話題化の事例を紹介しました。
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その中でも最も印象的だったのが、2023年に公開した映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の事例です。
この映画は、2016年7月に出版された原作となる書籍が2020年6月にTikTokから大ヒットにしたことでも有名です。出版当時の発行部数が2万部だったものが、TikTokで話題化した結果、シリーズ累計発行部数は100万部を超えているというので、その人気がよく分かると思います。
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』本予告90秒
ただ、映画化が発表されたときに、書籍では中学生だった主人公が映画では高校生になっていたことから、原作ファンを中心に批判が高まってしまいます。
しかし、映画会社はこの批判に迅速に反応します。原作者を招いたオンラインイベントを開催し、主人公の年齢を変更した背景を丁寧に説明しました。
そのイベントなどでの説明を通じて、批判していた反対派の多くが賛成派に変わり、この映画は興行収入が40億円を超える大ヒット作品になりました。
品田氏は「批判を受けて黙ったりやめたりするのではなく、理解してもらえるように行動することでネガティブなエネルギーをポジティブに変えた」とポイントを分析していました。
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初日の足立氏からも「炎上の一歩手前が話題化なので、そこに一歩踏み込む勇気が大事」というエールが会場に投げかけられており、それを象徴する話といえるでしょう。
また、足立氏からは「話題化の施策はSNSやPRが中心なので、費用はそんなにかからない。失敗したら話題にもならないので、社内にも知られないため、リスクをもっと取って挑戦するべき」という指摘がされていました。
品田氏からも「自分がやりたいことが簡単にでき、そこで結果を出した人が、さらに次の挑戦もやりやすい時代。リスクを避ける情報が山のように流れているけど、あえてぶつかって乗り越える力が求められている」と、足立氏とシンクロするメッセージを投げかけていたのは、非常に象徴的だったと思います。
2人のエールに勇気をもらった日本のマーケターが、さらに新しい「話題化」に挑戦することを楽しみにしたいと思います。
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