2つのシナリオを事前に準備しておく
中村 それでは最後のテーマ、「将来の予測」についてです。理想じゃないが「Reactive(リアクティブ)」で、理想が「Proactive(プロアクティブ)」です。これについてお話いただけますか。
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出口 皆さんもよく将来を予測しますよね。5年後、10年後がどうなっていますかなど。ここで伝えたいのは、そんなに難しいことではなく、常に2つの選択肢だけ準備しておきましょう、ということです。ひとつは、進行中のプロジェクトで予想以上に結果が出たときです。もうひとつは、予想以下で結果が下回ったときです。
この2つのシナリオに対して予測と準備をしておいてください。予想より上手くいっているときは、結果をさらに上積みするために追加投資ができないかな、と考えておくことで、ビジネスチャンスを活かすことができます。マーケティングの費用は原則変動費なので、結果が出なかったらバッサリ切られてしまう。結果が出たら、ガッツリ使うことができる。これは基本です。
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目標に対して、自分が達成できなかったら予算はお返しします。その代わり、私が2倍、3倍と結果を出したら、その分予算も追加してくれるんですね、というぐらいのスタンスで仕事をしてみましょう。そうすると楽しくてしょうがなくなると思います。
次は、失敗しているときのシナリオです。うまくいっていないとき、皆さん逃げたくなりますよね。でも、そのときこそがチャンスなんです。今まで通りに取り組むのではなく、そのときはまったく異なる策を持っていくんです。すでにダメだった今までのやり方の延長線上だと上手くいきません。
「実はまだ試してなくて、こんな案があるんです。やってみませんか?」と言うと予算を削りに来た上司が、「それ面白いじゃないか」と言って、追加の予算を検討するということもあり得ます。ただ、これは後から準備をし始めても遅いです。主導権を握るためにも、あらかじめ準備しておくことが重要です。
中村 出口さんが考える理想のマーケターは、泥臭さやハングリー精神を感じますよね。その分、傷ついても前に進んでいく姿勢が伝わります。
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出口 上司や先輩から言われたことをそのままやる、それでは面白くないですよね。だから、言われたことは素直にやりつつ、ハングリー精神を少しでも持っておくと、泥臭いけど楽しいんです。