② 運用型広告費の成長
インターネット広告費の中で8割程度を占めるインターネット広告媒体費の中で(図4)、運用型広告費は2010年から24年までの15年間に年18.4%のペースで成長を続けており(図5)、2010年にインターネット広告媒体費の40%だったシェアは2024年には88%にまで拡大しています(図6)。

図4:インターネット広告費を構成する媒体費と制作費のシェアの推移(%)

図5:運用型広告費の推移(億円)

図6:インターネット広告媒体費に占める運用型広告費のシェアの推移
運用型広告は、ポーターらの「情報集約度」の概念と照らし合わせると、「バリュー・チェーンの情報集約度」の潜在的な高さが顕在化された典型的な例と言えるでしょう。とするならば、今日私たちが広告業界で目撃している、広告の自動的な最適化がもたらしたと言われているさまざまな問題は、今後「バリュー・チェーンの情報集約度」が進む他業界で起こることを先駆けているのかもしれません。
次に、日本の広告費において2018年から新たに推定された「マス4媒体由来広告のデジタル広告費」です。こちらの7年分のデータを見ると、このセグメントの成長が目につきます。
③ マス4媒体由来デジタル広告費の成長
インターネット広告媒体費の中で、マス4媒体由来デジタル広告費は2018年から24年までの7年間に年17.4%のペースで成長を続けており(図7)、2018年にインターネット広告媒体費の4.0%だったシェアは、2024年には5.1%と拡大傾向にあります(図8)。

図7:マス4媒体由来デジタル広告費の推移(億円)

図8:インターネット広告媒体費に占めるマス4媒体由来デジタル広告費のシェアの推移(%)
マス4媒体由来デジタル広告費の中で、特にテレビデジタル広告費の伸びが顕著です。テレビデジタル広告費は2018年から24年までの7年間に年35.6%のペースで成長を続けており(図9)、2018年にマス4媒体由来デジタル広告費の18.0%だったシェアは2024年には43.0%と拡大傾向にあります(図10)。

図9:テレビデジタル広告費の推移(億円)

図10:マス4媒体由来デジタル広告費に占めるテレビデジタル広告費のシェアの推移(%)
マス4媒体由来デジタル広告費のインターネット広告媒体費に占めるシェアは、まだ少ないものの成長基調にあります。特に、テレビデジタルの急成長は、他業界において情報革命への対応が遅れて苦しんでいる既存の優良企業にとって、新たな希望をもたらすものといえるでしょう。
現在、注目を集めているAI技術のうち、構造的なデータ処理を行う「予測AI」はすでに運用型広告などで広く活用されています。さらに今後、非構造的なデータの処理を行う生成AIなどの新たな技術がもたらす事業環境において、インターネット広告媒体費やその他の広告費の中から、「運用型広告費」や「マス4媒体由来デジタル広告費」に匹敵するような成長を遂げる新たなセグメントが登場するかもしれません。「広告」は、今後も情報革命による変化を象徴するモデルケースとして進化を続けていくでしょう。
※記事中にある図2から図10までは、「日本の広告費」での発表に基づいて筆者の及川氏が作成。
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