「スター・サイエンティスト」起点に科学起業の課題探る


 博報堂は9月1日、同社の新規事業開発を担う「ミライデザイン事業ユニット」と、早稲田大学ビジネススクール 牧 兼充(まき かねたか)准教授の研究室が、大学発のスタートアップやイノベーション創出のために必要なリソース・課題を明らかにする共同研究を始めると発表した。

 近年、アカデミアでの研究成果を生かした科学技術分野における大学発スタートアップが注目される一方、研究者の起業にはさまざまなハードルがあることも知られている。新技術が事業化に適しているかどうかを見極める難しさや、経営や資金調達に関する知見・経験を持った人材、外部ネットワークとのつながりといったリソース不足の問題だ。

 今回、博報堂がタッグを組む牧研究室は、卓越した研究業績(論文数や特許出願数)を持つ「スター・サイエンティスト」に着目し、彼らが参画するスタートアップの特徴や成長要因、ひいてはサイエンスとビジネスの好循環を可視化する研究に取り組んでいる。

 また、博報堂の「ミライデザイン事業ユニット」は企業とアカデミアなど多様なステークホルダーの持つリソースを掛け合わせ、イノベーション創出を支援してきた実績がある。

 

大学発インキュベーションを支援


 共同研究では、牧研究室のスター・サイエンティスト研究を土台として、スタートアップ創出において必要となる技術の成熟度や、ネットワーク形成などの人的資本・リソースがスタートアップ創出にどのように影響を与えるかを明らかにすることを目的としている。

 博報堂によると、具体的には以下のようなステップで共同研究を進める。

①研究者および科学起業家へのインタビュー調査を実施。
②スター・サイエンティストを起点とした人的ネットワーク形成の過程や、そこに参画する科学起業家の特徴(研究分野、ビジネスへの関心、特許数など)を明らかにする。
③科学起業家がイノベーションを創出するのに課題となることを特定する。
④大学発イノベーション創出に向けた関係ステークホルダー(大学・研究機関・企業など)に提言を行う。

 博報堂と早稲田大は、「博報堂の強みであるクリエイティビティと多様なステークホルダーとのネットワーク、牧研究室の研究力を調和させ、今後の大学発スタートアップのインキュベーション支援に貢献していく」としている。

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