生成AIがクリエイティブ制作の主体に?
サイバーエージェントは9月3日、大手広告主企業100社のデジタル広告出稿担当者を対象に、企業のクリエイティブ制作における生成AI活用の現状と今後についてアンケート調査を実施した結果を公表した。
それによると、近年の企業におけるクリエイティブ制作は全体的に「増えた」という回答が大勢を占め、約6割は「今後も増えると思う」と回答。制作において生成AIを活用していると答えた企業は54%だったが、「未活用」の企業のうち約8割は「今後は生成AIを活用したい」という意向を示した。
さらに、3年後の企業のクリエイティブ制作における「生成AI活用レベル」に関して、半数以上が「広告バナー・動画広告では人よりもAIが制作の主体になる」と予想した。
本調査は生成AIの普及により企業のマーケティング・広告宣伝の業務フローが大きく変化していることを受け、サイバーエージェントと調査機関デジタルインファクトがWebアンケートを実施。日経広告研究所「有力企業の広告宣伝費2024年版」に収録されている企業(グループ会社も含む)を対象とし、調査時期は2025年6月。
制作物は増加傾向
調査によると、近年の企業のクリエイティブ制作全体について「増えた」との回答が69%にのぼり、「減った」は5%にとどまった。中でも広告用動画は86%、インナーバナーは82.1%、広告バナーは81.0%、SNS投稿用クリエイティブは78.8%が「増えた」と回答。さらに、今後3年で制作物が「増えると思う」という回答は59%、「現状維持だと思う」は35%だった。
(図表1)制作物別の増減

(図表2)制作物の増減予測

AI未活用企業も意欲は高い
クリエイティブ制作における生成AIの活用状況については、全体の54%が「現在、継続的に活用している」と回答し、活用用途は「構成・コピー案」「ペルソナ設計」といった「アイデア出し」が84.4%と最も多かった。「コピーやテキストの自動生成」が68.8%、「画像・イラストの生成」が51.6%と続く。「動画生成・編集」(17.2%)、「独自学習させたAIモデルの活用」(7.8%)など、高度な活用については他に比べて普及が進んでいないが、生成AIの活用法が多岐に広がりつつあることが見てとれる。
また、「現在活用していない」担当者のうち、78.3%が「今後は活用したい」と回答。 生成AI活用に対する業界全体の意欲の高さがうかがえる。
(図表3)生成AIの活用状況

(図表4)生成AIの活用用途

調査では、3年後の企業のクリエイティブ制作における「AI活用レベル(※)」についても予測を聞いた。制作の主体が「人」よりも「AI」であるレベルに達しているだろうと半数以上が予想したのが「広告やSNS投稿等の動画」(58.0%)、「広告バナー・インナーバナー等のデジタル上の静止画」(50.0%)だった。
※AI活用レベル
レベル0~2:制作の主体が「人」
レベル3~5:制作の主体が「AI」
(図表5)制作物別のAI活用レベル予想

調査結果からは、企業の「必要なクリエイティブ制作量」は増え続けており、生成AI活用のためのリソース確保が重要な経営判断となることが示唆された。
サイバーエージェントは、たとえばCRMとして利用するアプリ内バナーやHTMLメールといったデータ活用が可能なメディアなどにおいて、生成AIによってよりパーソナライズドされたクリエイティブを大量に生成・配信できることで「さらなる事業成果につながる可能性は高くなる」と指摘する。
同社は昨年12月、AI活用による企業のクリエイティブ体制の改革を目指す「AIクリエイティブBPO事業」をスタートしている。企業ごとの課題に応じた独自のAI設計と専門チームを組み合わせながら「クリエイティブ制作における持続可能な制作体制を確立し、企業の競争力向上に貢献する」としている。
※記事中の図表の出典はすべてサイバーエージェント リリース
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