今年の受賞作品の傾向は?公式セッションで中心的に議論されていたテーマ・トピックは?事業会社やブランド、マーケターにとっての気づき・学びは?ーーアジェンダノートでは、カンヌライオンズ2025を様々な切り口で、さまざまな関係者と振り返っていく。
今回の寄稿者は、住友商事でメディア・デジタル事業に携わる、世一麻恵(よいち・まえ)氏。カンヌライオンズの会期中に行われる30歳以下の若手クリエイターを対象とするコンペティション「ヤングライオンズコンペティション(ヤングカンヌ)」に、デジタル部門の日本代表として出場した。
一般的に、エージェンシーやプロダクションに所属するクリエイターが参加するイメージが強いヤングカンヌ。今回、いわゆる“クリエイター”ではない世一氏が、見事に国内予選を勝ち抜き、カンヌの地で本戦に臨んだことで、見えた景色とは。若手ビジネスパーソンのヤングカンヌ挑戦の軌跡を、前後編に分けて振り返る。
今回の寄稿者は、住友商事でメディア・デジタル事業に携わる、世一麻恵(よいち・まえ)氏。カンヌライオンズの会期中に行われる30歳以下の若手クリエイターを対象とするコンペティション「ヤングライオンズコンペティション(ヤングカンヌ)」に、デジタル部門の日本代表として出場した。
一般的に、エージェンシーやプロダクションに所属するクリエイターが参加するイメージが強いヤングカンヌ。今回、いわゆる“クリエイター”ではない世一氏が、見事に国内予選を勝ち抜き、カンヌの地で本戦に臨んだことで、見えた景色とは。若手ビジネスパーソンのヤングカンヌ挑戦の軌跡を、前後編に分けて振り返る。
「ヤングカンヌ出場者」という恵まれた立場を最大限に活かした
- ヤングカンヌ国内予選とカンヌ現地での本戦について振り返った、前回の記事はこちら
住友商事株式会社
メディア・デジタルグループ
世一 麻恵 氏
▶︎1999 年生まれ(26 歳)、東京都出身。早稲田大学在学期間においては、学生ショーケース・ライブイベントの企画演出等に携わる。
▶︎2021 年、住友商事株式会社に入社。現代アート・スタートアップ事業投資・メディア・企画・アニメ等、コンテンツ領域における新規事業開発を担当。(2021-2023 現メディアコマースユニット、2023-2025 メディアコンテンツユニット、2025-メディアデジタルグループCFOオフィス企画戦略チーム)
▶︎2024 年、ヤングカンヌ(カンヌライオンズ U-30 部門)において、総合商社社員として初の日本代表選出。2025 年、フランス・カンヌにて、世界本戦に出場。
メディア・デジタルグループ
世一 麻恵 氏
▶︎1999 年生まれ(26 歳)、東京都出身。早稲田大学在学期間においては、学生ショーケース・ライブイベントの企画演出等に携わる。
▶︎2021 年、住友商事株式会社に入社。現代アート・スタートアップ事業投資・メディア・企画・アニメ等、コンテンツ領域における新規事業開発を担当。(2021-2023 現メディアコマースユニット、2023-2025 メディアコンテンツユニット、2025-メディアデジタルグループCFOオフィス企画戦略チーム)
▶︎2024 年、ヤングカンヌ(カンヌライオンズ U-30 部門)において、総合商社社員として初の日本代表選出。2025 年、フランス・カンヌにて、世界本戦に出場。
カンヌライオンズでは、ヤングカンヌ以外にもさまざまなプログラムが実施されます。まる1週間カンヌの街中がイベント会場になり、各所で企業ブースやパーティー、トークセッションなどが開催されていました。

会場外にて開催されていたADWEEKのパーティー。
ヤングカンヌのパスを首から下げて歩いていると、思いがけず多くの人に話しかけられます。他国の出場者はもちろん、一般参加者や審査員まで、こちらが名乗る前から「Young Lions(ヤングカンヌ出場者)なんだね」「出場おめでとう!」と自然に会話が始まるのです。世界にはさまざまなカンファレンスがありますが、イベントの中心でこれほどウェルカムな空気感を味わえる機会は、なかなかないように感じました。
日々の業務においては、出資や協業といった形で多様な業界と関わる機会が多いため、まずは自社や自身の提供価値を適切に伝え、信頼を獲得していくプロセスが不可欠です。一方、カンヌライオンズでは、各国の予選を勝ち抜いた代表として、あらかじめ一定の評価と関心をもって迎え入れてもらえる立場にあるイメージです。
そうした貴重な状況を活かすべく、コンペティション期間以外はできるだけ多くの人と会い、異なる価値観やプロフェッショナルな視点に触れることに時間を使っていました。最終日にはホテルの床で体育座りのまま寝落ちしたほど、とても充実した1週間でした。

カンヌ出場パス。ヤングカンヌ公式パートナーのAdobeから貰ったピンバッジは、出場者のお揃いアイテムです。
とはいえ、ヤングカンヌ出場者の肩書きがあっても、すぐに対話が深まるとは限りません。年次はあくまで若手ですし、英語も習得途上だったため、専門的な議論に至るまでには一定の段階を要する場面もありました。
そうした中、元審査員の方と話す機会があったのですが、日本のメディア業界の現状や、自分自身が携わってきた仕事の背景などを共有するにつれ、次第に専門性を前提とした議論に移行していきました。「ヤングライオンズ」としての見え方から、プロフェッショナルとしての関係性へと切り替わるトリガーは、やはり実務経験に裏打ちされた視点なのだと強く感じた場面でした。
振り返ってみれば、社会人人生の中で、日の目を見なかった仕事や、成就しなかった案件も少なくありません。ただ、こうしたやりとりを通じて、積み重ねてきた知見が思わぬ形で活きるタイミングがあることを実感できたのは、大きな意味がありました。

カンヌライオンズの公式グッズ。今年のキャッチコピーは「MAKE HISTORY.」。
「クリエイター」の概念が変わった、世界中の同志との出会い
「Young Lions(ヤングライオンズ)」。カンヌ現地での一番の思い出を聞かれたら、間違いなくヤングカンヌ出場者である彼らの存在と答えます。
ヤングカンヌでは、世界各国から同世代が集まり、異なる背景や価値観を持ちながら、共通の課題に向き合います。特に印象的だったのは、開会式で突然始まったスピーチセッション。なぜカンヌに来たのか、これから何を目指すのかを、出場者が自らの言葉で語っていくのですが、その姿勢には、所属や国を超えた強い意志が感じられました。挙手制で登壇するスタイルだったのですが、数百人の前で堂々とアドリブのスピーチをこなす彼らを見て、クリエイターの概念が変わりました。

カンヌライオンズ初日、ヤングカンヌの開会式。自己紹介&交流タイムの後、スピーチセッションが始まった。
そして最終日。ヤングカンヌはコンペティションですから、大半の出場者が「敗者」として会期を終えます。ですが、クロージングパーティーで他国の出場者と再会し、互いの健闘をたたえ合う空気に触れたとき、結果以上に大切なものを得たと感じました。
もちろん悔しさがないわけではないですが、20代半ばというタイミングで世界中の同志とフラットな関係性で出会えたことは、かけがえのない経験になりました。

最終日夜に行われたクロージングパーティの様子。終了した時には午前2時を回っていました。
そして、人との出会いという意味では、予選から本戦、現在に至るまで、広告業界をはじめとするたくさんの方と会話の機会をいただきました。日本代表になっていなければお会いできなかったような方も多く、改めて応援いただいた皆様には感謝の気持ちで一杯です。 何よりも、日本代表の仲間たちの熱量にたくさん支えられました。ただただリスペクトばかりです。