成熟市場でも再活性化が可能
マーケーターが組み立てる戦略は、大きく2つに分けることができます。- 先にマーケット(市場)の枠を決めて、どこで戦うのか、誰が競合でどこからシェアを奪うのかという戦略を練る方法。これは理論的で計画を立てやすく、説得性も高いため王道の方法論です。
- マーケット(市場)の枠を決めずに、市場は自分たちでつくるという考えに基づく方法。誰からシェアをとるかは考えずに、どのくらいの人が自分たちの提言する行動を始めてくれるかを考えます。
80%近くの人がスマホを所有し、1日に平均3時間以上も使用している時代。スマートフォンゲーム業界は1年365日、1日24時間という中で、ひとりでも多くのユーザーに1分でも長く遊んでもらうための工夫を凝らしていたのです。
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縮小する柔軟剤市場で、シェアを落とすP&G
柔軟剤市場は、実は15年ほど前まで、徐々に縮小していました。今でこそ、多くの人が柔軟剤を使っていると思いますが、15年前は柔軟剤を使用する世帯は60%を切り、使うとしてもタオルを洗うときにしか使わないという人がほとんどで、全ての洗濯に柔軟剤を入れる世帯は20%でした。そんな縮小しつつある市場で、P&Gの柔軟剤「バウンス」は、シェアを落としている状況でした。
なぜ柔軟剤市場は縮小しているのか、そしてP&G「バウンス」のシェアは落ち続けるのか。その理由を探るために、ユーザーへの調査をしました。
「柔軟剤は習慣で使っているけれど、ときどき使い忘れることがあっても、仕上がりにあまり違いがない気がするので、使ったり使わなかったりですね」
「柔軟剤を使っている理由は何だろう、習慣かな?」
「特に気に入っている商品はなくて、安売りしているものを買っています」
「柔軟剤を使っている理由は何だろう、習慣かな?」
「特に気に入っている商品はなくて、安売りしているものを買っています」
そこから見えてきたのは、消費者の「柔軟剤を使う」という行動が惰性になっていること、そして商品間の差別化も明確にできないまま、企業間で価格戦争を繰り広げているという状況でした。
P&G「バウンス」も、他商品と一緒に「うちの商品の方が、より柔らかく仕上げる」「うちの商品の方が安い」と、“better(他社製品と比べてうちの方がよい)”を必死に叫ぶことで、市場縮小に一役も二役も買いながら、シェアを落とすという悪循環に陥っていました。