「団らん」体験を向上させるDX
――SRSホールディングスでは、2030年の目標売上高1000億円を支えるグループ機能の強化として、「SRS DX推進宣言 2030」で①顧客体験向上 ②従業員の生産性向上 ③グループ共通基盤の構築、という基本方針を示しています。田丸さんはDX推進本部長として、具体的にどのような業務をし、①~③のどれを最重要視して進める方針でしょうか。
DX推進本部は私の参画とともに発足し、職掌はデジタルに関するあらゆる部分です。グループ全体のDXとデジタルマーケティングはもちろんのこと、合併に伴ってバラバラだった勤怠管理の統一化、書類のデジタル化、Webサイトの改修など、グループ内に無縁な部署はないというくらい幅広く管轄しています。
「DX推進宣言」も私が考えたものです。①②③はいずれも優先度高く同時進行で進めていきます。ただ、お客さまに来ていただくビジネスなので、やはり一番に掲げる「顧客体験向上」が最も重要と考えています。
最近の飲食店ではタブレット注文やロボットによる食事運搬が普及しており、当社でも一部店舗で取り入れています。導入の目的は通常、人手不足対策と生産性向上です。これらの課題への対策は欠かせませんが、一方で、私はそれだけでは面白くないと思っています。一番のポイントは顧客が満足して「また来よう」と思ってくださることです。まだ詳しくは言えませんが、DXによって生まれる新しい顧客接点を、満足度向上にしっかりとつなげていく施策を考えています。

――中核ブランドである「和食さと」では、2020年に「今さらですが、アプリはじめました」と題してアプリを展開しました。アプリやAIの活用を含め、「和食さと」では今後はどのようにDX推進していくのでしょうか。
中期経営計画では「和食さと」について、「『団らん』を体現するブランド進化」を掲げています。顧客が来店したときに空間・料理含めさまざまな「団らん」を体験していただくというコンセプトです。このコンセプトに向かって、たとえば店舗の雰囲気に合わせたデジタル化や、コンテンツとしても楽しめる注文システムなどが考えられ、検討しているところです。
アプリについてはスタート時からあまり変化していないので、進化する予定です。Webやアプリは店舗以外での唯一と言える顧客接点なので、たとえば「家族で集まる時に使おう」と想起していただくのが目標と思っています。お客さまが行きたいと思ったタイミングでレコメンドを出したり、来店した際のお腹の空き具合や気分に応じておすすめメニューを提示できたりするのも、AIの活用しどころかもしれません。
SRSには「和食さと」以外に寿司業態の店舗も多くあるので、「今日水揚げされたばかりの新鮮な魚介」「貝の種類」など、AIに聞いたほうが正確な受け答えができるケースもありそうです。もちろん、すべてをAIに任せるというのではなく、あくまでそれぞれのブランドコンセプトにマッチするかどうかを見極めて、うまく活用していきたいです。
同様にお客さまとのコミュニケーションも、地域や季節によって、何が最適かはかなり変わります。SNSなどデジタルコミュニケーションがいいこともあれば、地方であれば意外とテレビCMが効果的な場合もある。そのあたりも検討していきます。




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