マーケティングは、街にどう貢献できるのか #06

渋谷区が進める「都市間連携」から見えてきたメリットと可能性【前編】

渋谷に限定して、活動しているわけではない

 私が所属する「渋谷未来デザイン」が設立されて早9カ月が経ち、新しい法人パートナーを迎えてアクティブに進行しているプロジェクト数も20を超えた。組織としての1期目(3月決算)は、全てが予定通りに進んでいるかと言えば、難しいところで走りながら開拓していることが多く、かなり柔軟に対応しなければならない状況だが、個人的にはまずまずの状況だと思っている。現在は、今季のラーニングを活かして、組織運営も含めて来年度の事業計画を進めている状況である。

 さて、渋谷未来デザインと聞いて、よく質問されることは「これは渋谷に限定しないといけないのでしょうか?」「渋谷だけではないのですが、大丈夫ですか?」である。もちろん我われは、渋谷の発展を目指しているが、全ての活動が単独の地域のためだけに行っているわけではない。



 「渋谷の可能性から世界の未来」と銘打っているように、渋谷という「場所、人、アイデア」をベースに地域モデルのあり方を考え、それが他のエリアと繋がることが大事であり、ここだけで完結させる意図はない。

 最近は、渋谷未来デザインについて、人づてに聞いたり、紹介されたりした他の自治体や団体から視察やミーティングの依頼も受け入れている。どのような可能性があるのか、できるだけ広域に検討していけたらと思っている。

 そんな背景の中、我われの活動の一つの軸に都市間連携事業がある。
 
Future Design Shibuya
 これは渋谷の発信力や特性を活かして「強い日本」をつくることを目的に、渋谷をハブとした都市間連携のあり方を研究し、連携する他都市ブランドと渋谷ブランド価値が共に向上する事業を展開し、国内外に発信することが目的の活動である。

 これまで渋谷未来デザインは、企業との繋がりによって発展してきた部分が強く見えているかもしれないが、実は地域同士の繋がりもとても大事で面白いと思っている。地域の課題はそれぞれ異なるが、実際に話してみると、課題の核には共通点があったり、あるいは両者を補完しあえるアイデアが生まれてきたりする可能性が高い。

 つまり、街同士の繋がりでお互いが高められるソリューションをつくれば、我々はどのような街とでも繋がることができ、日本全国に展開できるようなポテンシャルを持っているのだ。さらに、その形が実現できれば、企業や学校にとっても一カ所でなくて複数カ所で実験できたり、連携できたりするようになる。

 すでに渋谷区が繋がっている地域はある。特に、忠犬ハチ公において密に連携する秋田県大館市や、観光・文化交流協定を結んでいる鹿児島市などが挙げられる。どちらかと言えば観光文脈が多いような気がする。

 もちろん観光も重要だが、我々のミッションは渋谷という地域特性を活かして、新しい技術やサービスを活用した都市生活の新たな可能性を国内外に向けて提示することであり、渋谷区を超えて社会全体の持続発展につなげることを目指している。そのような背景もあり、初年度は海外を含む3都市との連携事業を行っている。

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