マーケティングは、街にどう貢献できるのか #06

渋谷区が進める「都市間連携」から見えてきたメリットと可能性【前編】

2 中国広東省深セン市南山区との海外都市間連携


 昨年5月に中国・南山区長が訪日した際に、渋谷区長とお互いの都市の取り組みについて共有し、さっそく最初の企画が立ち上がった。それは南山区政府が開催するスタートアップ企業を対象とした、今年で11回目となる国際的なピッチコンテスト「Nanshan "Entrepreneurship Star" Contest 2018」の日本国内予選を渋谷で行い、その主催者を我われが勤めることになったのだ。

 南山区といえば、人口100万人以上で面積も182㎢ある区。その国際港は、香港やマカオと結んでおり、日本からもとても行きやすい。経済特区という地の利も活かし、ファーウェイ、テンセント、ZTE、DJIなど、著名な中国企業が本社や主要拠点を構えている。

 国内予選に向けて100以上のアイデアからオンライン予選を通過した10グループが参加し、国内予選の審査員を努めた夏野剛氏、大櫃直人氏(みずほ銀行)、小田嶋 Alex 太輔氏(EDGEof)、加藤由将氏(東急アクセラレートプログラム)、深圳市南山区からの主催者代表として参加した Alex Wang 氏 (LeaguerX CEO)、そして長谷部健渋谷区長もゲストとして参加した。
 
Future Design Shibuya
 その厳正なる審査の結果、渋谷区に本拠地を置くエアロネクストが開発した次世代ドローンに必須となる機体の重心を最適化する技術 「4D Gravity」が日本代表に選出され、2018年11月に南山区政府主催の決勝大会に参加した。登録プロジェクト数は過去最高となる4000件で、有効プロジェクト数が2695件、内南山区外からの応募が2106件で全体の78%となり、香港、台湾、イスラエル、アメリカ、日本の海外予選の応募総数は540件で、全体の20%を占めた。

 大会カテゴリーは「成長企業組」と「初創団体組(スタートアップ枠)」に分けられ、各チーム5分間のプレゼンと投資家からの質疑応答を行う形式で行われ、日本代表に選ばれたエアロネクストは、次世代ドローンに必須となり得る技術でNanshan "Entrepreneurship Star" Contest 2018世界第3位となり、渋谷発のスタートアップや先進テクノロジーを海外へとつなぐ役割を果たした。

Future Design Shibuya
 偶然にも渋谷の企業が国内予選で優勝して、さらには世界でも評価を受けたわけだが、我々のミッションは、渋谷から世界に誇るスタートアップ企業を排出することで、この地域をスタートアップが生まれる街というイメージを強くすることで日本を強くしていきたい思いがある。

 渋谷は多様性や自由な発想を受け入れる寛容な場所であり、それを実現するプレイヤーが凝縮されていることが大きな魅力ともなる。先端テクノロジーを活用したスタートアップが渋谷からどんどん出てきて、さまざまなプレイヤーと連携して世界へ発信して行けるようなバックアップができ、我々の強みである他の地域の行政とも連動して何かを起こすことができれば、今回の都市間連携の新しい姿をつくり上げることができると思う。

参考:エアロネクストによるドローンの新技術『4D Gravity』が日本代表に選出


 ちなみに深センはドローンの聖地であり、この場所で日本のドローンのスタートアップ企業が世界進出のきっかけをつくることができれば、まさに世界からの注目が集まるだろうと思っている。

 今回、一緒に取り組んだ南山区側のパートナーも彼らを全面的にバックアップしていく意向があり、これからの展開が楽しみである。区長からのコメントもあったが、渋谷をスタートアップの街としてもっと発展させたいという思いがあり、このような都市間連携が増えることで、渋谷で起業して世界にチャレンジしたい企業が増えることにも貢献できたらと思っている。

※後編に続く
 
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