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売れるモノにはワケがある。PR目線で読み解くヒットの構造

ネコ動画が人気を集める理由、いなば食品「CIAOちゅ~る」の秀逸PR

家族としての存在感の高まりが、ペット市場成長の源

 今や空前の“猫ブーム”に湧く日本。2016年に関西大学の宮本勝浩名誉教授が発表したレポート「ネコノミクスの経済効果」によると、2015年の猫ブームがもたらした経済効果は2兆3162億円にのぼったそう。さらに「一般社団法人ペットフード協会」の調査では、2017年は猫の飼育数が犬を上回ったと発表されました(猫が953万匹に対し、犬は892万匹)。

※参照元:東洋経済ONLINE「空前の『猫ブーム』の裏に隠れた残酷な真実」 (2018/06/17)

 殺処分、多頭飼い、ペットロス、悪質ブリーダー問題……そんなネガティブな社会問題も含んだブームであることは事実ですが、今回は「WANちゅ~る」の発売をきっかけとして、ペットビジネスにおけるPRについて綴りたいと思います。

 ここ数年、SNS上では動画の投稿比率がどんどん伸びています。インスタ映えを狙う飲食店のメニューも、静止画より動画を撮影されることを意識したものが増えているようです。

 そして、ペットの動画も急増しています。昨年3月に登場した「人間お断り」を謳うペット専用のSNS「Petzbe」をはじめ、ペットを主体としたSNSアプリが次々と登場していますし、若者を中心に大ブームとなっている「Tik Tok」でも、猫や犬の動画が流行っています。またペット連れOKの宿泊施設や、ペット可マンションの物件数、ペット保険の加入者も増えているそうです。
 
「Petzbe」上では、フォローは「Sniff!(クンクン)」、いいね!は「Lick(ペロペロ)」。
 背景には少子高齢化、既婚率の低下、ストレス社会、核家族化といった社会的問題もあるでしょう。肌感覚ではありますが、ペットと人間の関係性を昔と今で比べてみると、“家族としての絆”が増しているように感じます。言い換えれば“ペット依存”と言えるのかもしれませんが、その絆の強さに比例して、ペットに掛けるお金も増えているという実感があります。
 

SNSに疲れた現代人が求める、一服の清涼剤

  さて、話を「CIAOちゅ~る」に戻しましょう。SNS上でこれだけペット動画が流行っているのにはいくつか理由があると思いますが、端的に言ってしまえば、やはり「癒し」が求められているのだと思います。ペットを飼っている人は日々「癒し」を実感しますし、飼ってない人でも「いつかは私も」という夢・憧れを含め、そこに一服の清涼剤のような効果を求めているのでしょう。

 “インスタ映え”する画像や動画には、ハイブランドのアイテムや高級な食事、派手なパーティーの様子があふれています。いわゆる“勝ち組”“リア充”“パリピ”の要素が満載です。そうした投稿に辟易したり疲れたり、ついていけなかったり……という人が増えていることが、各種調査からも明らかになってきています。そんな中、ペットの動画や画像は、多くの人にとって分け隔てなく可愛い。それを見ることで、英気を養っている人が多いのではないでしょうか。

 猫動画のCM化や、動画生成アプリのリリース。消費者の“SNS疲れ”の兆候を察知し、先手を打つ形で展開された「CIAOちゅ~る」のPR戦略は秀逸だと感じます。

 自社商品の特長・特性を説明するのではなく、徹底的に猫にフォーカスし、ターゲットである飼い主たちと一緒にその魅力を楽しむ。そうして着実にブランドのファンを増やしてきました。

 今回のコラムを書くためにも、「ちゅ~る」シリーズを発売するいなばのWebサイトにアクセスしたところ、「あ!犬のCM動画の募集が!」と一瞬小躍りしかけましたが、よく見ると募集は終了していました。



 でも、きっと次の募集もあることだろうから、愛犬のゴエモンと散歩がてら「WANちゅ~る」を買いに出かけたいと思います!今夜は動画撮影会だ!(笑)。

 
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