よなよなエールのマーケターが迫る!ファンベースの最前線 #03

他人が認知していない「高級」は、プレミアムブランドとして価値がない

高級ブランドにとって大事な希少性、どう演出するか

稲垣 一方で、プレミアムブランドはみんなが知っている必要があると考えると、とくに高級車の場合は、フェラーリやロールスロイスのような一部のブランドを除くと、おおよそブランドが限られているので、みんなが同じ車に乗ることになってしまい、ブランドとしての差別性が弱まってしまう面もありそうです。

ユニークでファンがいるブランドは、アップルしかり、ハーレーダビッドソンしかり、ある程度の希少性を持っている場合が多いです。高級車の場合は、どのようにブランドの独自性を維持しているのでしょうか。



高田 カルティエが言うように、良いブランドは「みんなが知っているけれど持っている人は少しだけ」というのが理想です。しかし、おっしゃる通り、高級車の場合は、みんながベンツ、レクサス、BMW、アウディなどに集約されるので、何とかそれぞれブランドで希少性を演出する必要があります。

 それが、さらなる上位ラインへの拡張や、先進的なスポーツカーの開発、あるいはマクラーレンなどのモータースポーツブランドとのコラボレーションだったりするわけです。こうした取り組みによって独自性を維持する取り組みが常に求められるのは、ある程度の規模をもったプレミアムブランドの特性だと思います。
 

プレミアムブランドのファンづくりのカギは仕組みづくり・組織づくり

稲垣 プレミアムブランドのファンづくりを突き詰めていくと、デパートの外商のようなものが究極の形になるのでしょうか。 

高田 そうですね。デパートの外商はまさに近いと思います。さらに高級な、“超プレミアムブランド”となると、自社製品に関係のない御用聞きもする「コンシェルジュ」のようなスタイルで、顧客との関係性づくりを行っていくこともありますね。



稲垣 しかし、「優秀なコンシェルジュ」のように、ある特定の個人に依存したファンづくりは諸刃の剣の側面もありそうですね。特定の優秀な人材が辞めたり、異動したりすると、一気に顧客との関係性が低下するリスクがあります。

高田 そこがポイントです。過度に属人化しないこと。たとえ人の出入りがあっても継続的に販売店のファンとして顧客をつなぎとめておけるかどうかは、スムーズに顧客を引き継ぐためのフローや店舗マネージャーによるマネジメントがカギを握ります。だからこそ、この手法は顧客満足を高めるシステマチックな仕組みづくり・組織づくりが必須です。

その結果として、たとえ様々な店で購入できる商品であっても、「このブランドは、ここで買うから良い」という購入場所のこだわりにつながり、高い顧客満足と長期にわたる関係性の維持が可能になるのです。

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