成長企業から考える「マーケターの定義」 #03

広告会社からLINEに転職して気づいた、半歩先を照らしていく「戦略プランニング」

半端先を照らしていく「戦略思考」と「戦術思考」

 例えが分かりやすいか不安ですが、その時僕の頭の中に思い浮かんだのが、高村光太郎さんの「道程」でした。
 
僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る
ああ、自然よ
父よ
僕を一人立ちにさせた廣大な父よ
僕から目を離さないで守る事をせよ
常に父の氣魄を僕に充たせよ
この遠い道程のため

『道程』高村 光太郎 氏

 ここで言う「僕」がサービスで「自然」が市場や世の中、「父」がマーケターのことです。そして「道程」を戦略ストーリーのことだと捉えると、マーケティングにおいて戦略を機能させることに非常に近い内容だと感じました。

 日々市場が目まぐるしく変化している今の時代、サービスが進むべき明確な道を先に示すことは難しく、道を歩んでいく過程で半歩先を照らし、進むべき道を示し続けることが重要だと思っています。

 そのためにも、戦略的な思考を持つ“父”であるマーケターが、プロジェクトのPDCAの全プロセスに深く関与し、選択が必要な場面で毎回細やかに、その都度ディレクションしていくことが、結果として戦略を機能させることになるのだと思います。「道程」の「僕から目を離さないで守る事をせよ」とは、まさにこのことを言っているように思えたのです。

 PDCAの高速化により、戦略プランナーがPlanフェーズだけではなく、PDCAの全行程に並走しながら深く関与しなければ戦略は機能しなくなりました。そこで、戦略的な思考を持つ人間がマネージャーとして業務を外から管理すると言うスタイルは機能しなくなってきていると思います。マーケティングディレクターは、メーリングリスト、メッセンジャーのトークルーム、定例MTGなどを駆使し、現場にどっぷり浸かりディレクションをし続けなければなりません。

 戦略を設計して、戦術を設計して、実行して、振り返る、といったようにファンクションごとに区切りを設けてサイクルを回すのではなく、PDCA全てのフェーズに戦略性が通底している状況をキープし続けることが重要なのです。

 そのためには、施策のディレクションを現場で行いつつも、実行した施策をデコンストラクションして戦略ストーリーに紐付けていくことを、右脳と左脳を駆使しながら高速で回していく必要があります。なので、戦略担当というものは実質的に消えていき、戦略思考を持ちながら戦術をディレクションすることで、マーケティングを統合する役割の担当が生まれてくるのだと思います。高速化したPDCAに並走するには全てのマーケターが戦略思考と戦術思考の両方を持つことが重要であることが伝わったのであれば嬉しいです。

 今回も、また3000文字を超える文章になってしまいましたが、懲りずに読んでいただき、ありがとうございました。それでは、また。
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