マーケティングで社会課題を解決できるか #03
「お前の趣味に、お金を使えない」リクルートでの精子ビジネス立ち上げをどう説得できたのか
「男性の不在」という社会課題の発見
その後、「男性の当事者意識の低さ」による課題をさらに明確にするため、ヒアリングの対象を不妊治療経験者や不妊治療専門医へと拡げていきました。その結果、「妊活における男性の不在」がもたらしている負が明らかになってきました。男性の妊活参加が遅れることで、妊活においてとても重要な「時間」が無駄になってしまっているケースが多いことがわかったのです。
現状、妊活・不妊治療の多くは、まず女性からアクションを起こしていると言われています。一般的な流れでは、女性が基礎体温計や検査薬を使ってタイミングを予測する「自己流妊活」を半年から1年ほど続けて、妊娠しない場合は女性が一人で婦人科に相談に行きます。
婦人科で基礎的な検査を行い、特に大きな問題がない場合、医師からタイミングの指導などを受けながら、さらに半年ほど妊活を続けます。それでも妊娠しない場合には人工授精という次のステップに進みますが、ここでようやく男性が精液検査を受け、実は男性に不妊の原因があったと判明するケースも少なくないのです。
実は、WHOの調査によると不妊の原因の約半分は男性にあります。
もし男性側に原因があるにも関わらず女性だけで妊活を続けた場合、それに気がつくまでに費やした時間やお金が無駄になってしまいます。とくに時間は妊活においてとても重要で、女性の年齢や個人差にもよりますが、男性の不参加による「時間」の経過で妊娠のしやすさが大きく低下してしまうこともあるのです。
妊活のはじめから男性が行動を起こせるようにすることで、妊活・不妊治療全体の流れを変えるとともに、「妊活は男女ふたりで取り組むもの」という新しい文化をつくっていきたい。
解決すべき社会課題を発見し、それを解決するための明確な打ち手となりえたことが、リクルート社内で「Seem」のローンチを意思決定できた大きな要因でした。