キャラクタービジネス最前線!サンリオの改革を追う

ハローキティ45周年。激動のキャラクター市場を生き抜く、サンリオのマーケティング戦略

 サンリオのキャラクタービジネスが改めて注目を集めている。同社のテーマパークである、サンリオピューロランドは2018年、開園した1990年の記録を超える196万人が来場した。また、人気キャラクターである「ハローキティ」は45周年を迎え、企業の広告宣伝にも積極的に活用されている。サンリオのマーケティング戦略について、CMOを務める木村真琴氏に話を聞いた。
 

キャラクターをアップデートし、息の長いキャラクターを育てる

 

 ――「ハローキティ」をはじめとするサンリオの人気キャラクターは、老若男女から愛され、企業のコミュニケーション活動にも積極的に利用されています。ここ数年、木村さんはじめ著名マーケターもサンリオに参画しています。キャラクタービジネスにおけるマーケティングをどのような考えで取り組んでいるのでしょうか。


 キャラクタービジネスで何よりも重要なのは、キャラクターをどれだけファンに根付かせるかです。そもそもキャラクターがファンに影響力を持ち、ある程度のファン数がなければ、グッズはもちろん企業にライセンスを購入していただくこともできません。

 その点、サンリオは多くの資産を持っています。業界内ではローンチから2~3年で消えてしまうキャラクターも多くいる中で、「ハローキティ」が45周年。その他にも「マイメロディ」「リトルツインスターズ」「ポムポムプリン」「シナモロール」「ぐでたま」も普遍的なかわいらしさとデザイン性で人気があります。一概に「普遍的」と言っても、古くならないという時間軸もあれば、年齢・性別・国籍などの属性軸もあります。その両軸を兼ね備えるキャラクターを育てることがマーケティング本部のミッションです。

 そうした前提の上で、キャラクターを常にアップデートする必要があります。3年後や5年後など未来でもキャラクターが活躍できるようにしなければならないのです。そのアップデートの方向性もマーケティング本部が中心となって考えています。
木村真琴
サンリオ CMO マーケティング本部長

P&Gジャパン、ソニーマーケティング、INGダイレクトでマーケティングを歴任し、前職は西友(ウォルマートジャパン)にてマーケティング本部を統括する。 2018年1月 サンリオ入社。 4月よりCMOとしてマーケティング本部を組織する。
 

 ――現在、マーケティング本部で特に力を入れていることは何ですか。


 ひとつには、企業の広告宣伝に対するライセンス提供です。キャラクターが企業のプロモーションやイメージキャラクターに採用されたり、グッズに使われたりすること自体が、ある意味キャラクター自身の宣伝になるのです。

 キャラクターごとの特徴をつかんで広告宣伝に利用いただくことは、ライセンス先にとってもメリットがあります。同じキャラクターを起用している他社も同様の考え方で取り組むことで、相乗効果が生まれるのです。
 

キティとマイメロディでは、担える役割が異なる

 ――キャラクターの方向性を決めて打ち出すという手法は、タレントのマネジメントに近いように感じます。


 その通りです。キャラクタービジネスは、タレントビジネスに近いと考えています。芸能プロダクションがタレントの個性を考えて伸ばしたい方向に合った仕事を探すように、我々もキャラクターの持つストーリーをふまえて、企業にアプローチしているんです。それを我々は「提供価値」と呼んでいます。例えば、ハローキティとマイメロディでも提供価値は異なります。
 

 ――どのように異なるのですか。


 例えば、ハローキティは2025年に大阪で開催される国際博覧会(万博)を日本に誘致するための特命大使を務めました。それはキティが「代表性」という特性を持っているからです。つまり企業がキティを起用すれば、その業界の代表であることをアピールできます。さらに女性キャラクターという要素も加わり、社会的なメッセージを含めることも可能です。こうした役割を担えることがキティの提供価値です。
 
国際博覧会(万博)誘致の特命大使を務めるキティ ©️’76,’19 SANRIO 著作(株)サンリオ
 一方で、マイメロディはファン一人ひとりの心に寄り添う存在です。見た目もかわいいのですが、例えばマイメロディのTwitterアカウントには哲学的な言葉がつぶやかれていて、ファンはその言葉を精神的な支柱にしています。

 つまり、キティは大衆に語りかけることができ、マイメロディはより個人に寄り添うことができるキャラクターだということです。
 
マイメロディ ハローキティ ©️’76,’19 SANRIO 著作(株)サンリオ

 

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