ほろ酔いマーケティング談義 Tipsy Tips for Marketers #01

魅力的なカクテルから、ストーリーテリングの大切さが見えてくる【バカルディ 須田伸】

お酒には「魅力的なストーリー」がある

 こんにちは。バカルディジャパンという洋酒の会社でマーケティング部門の責任者をしている須田伸(すだ・しん)と言います。

 以前、広告マーケティングに関する専門出版社のWebメディアで対談企画を、当時私が在籍していたFacebook Japanの社員として連載していました。今度は「洋酒のマーケティング」のことを書けないだろうかと思い、当時の連載編集担当さんにメッセンジャーで連絡したのが先日のことです。

 すると、数年のご無沙汰の間に彼も転職をしていて、今はナノベーション社でアジェンダノートを担当されているということで、今回はこちらに寄稿させていただくことになりました。

 デジタルの世界も面白いですが、お酒の世界も実に興味深い発見がたくさんあり、それをこの場を借りて少しずつ発信していきたいと考えています。どうぞよろしくお願いします。

 第1回目は、バーテンダーたちの「自分のカクテルが世界中のバーでサーブされるようになるための戦い」をテーマに、ストーリーテリングの重要性について書こうと思います。この文章を今、読んでいる方は普段、バーに行く習慣がありますか?

 私はバカルディの社員になる以前から時々行っていました。初めてバーに行ったのは博報堂で広告制作者をしていたときに、クリエイティブディレクターの上司に連れて行ってもらったタイミングだったと思います。その後も、サイバーエージェント在籍時には、会社が所有するバーが渋谷にあったこともありますし、Facebook Japanでは当時のサービスアパートメントのオフィスから通りを挟んで向かいのホテルのバーにちょくちょく行っていました。

 ただし、たいてい注文するのはウィスキーのオンザロックやソーダ割りで、カクテルの名前は多少知っていても飲んだことがないものがほとんどでした。でも、今は違います。この業界で働くようになって、カクテルの世界には実に豊かなストーリーがあることを知りました。

 たとえば「キューバ・リブレ」。「キューバの自由に乾杯!」という意味のカクテルで、20世紀初頭にキューバを支配していたスペインがアメリカとの戦いに敗れ、キューバが独立国家となった際に誕生したカクテルと言われています。レシピは、当時のキューバを代表するお酒であるバカルディラム、そしてアメリカを代表するドリンクであるコカコーラをミックスして、ライムを絞ったもの。まさに独立を成し遂げたキューバとそれを助けたアメリカをカクテルに昇華させた一杯と言えるでしょう。その後の1950年代のキューバ革命から今に続くキューバとアメリカの敵対関係を思うと、さらにその味わいが人生にも似た苦みをも感じさせてくれます。
 
キューバリブレ
 もうひとつ挙げるとすれば、「ネグローニ」。これは同量のカンパリとスイートベルモットとソーダを加えた「アメリカ―ノ」と言われる、伝統的カクテルを「ソーダの代わりにジンで作ってくれ」と毎回頼む伯爵のオーダーに対してバーテンダーが「これからはこのカクテルを伯爵、あなたの名前をとってネグローニと呼ぶことにしますから、ただネグローニをくれとだけ言ってください」とお願いしたのがきっかけなのだとか。
 
ネグローニ
 他にも、お酒の世界には魅力的なストーリーを持つ、美味しいカクテルがたくさんあります。

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