ほろ酔いマーケティング談義 Tipsy Tips for Marketers #01

魅力的なカクテルから、ストーリーテリングの大切さが見えてくる【バカルディ 須田伸】

後世に残るカクテルを生み出すためのカクテル・コンペティション

 私が働くバカルディでは、「バカルディ・レガシー・カクテル・コンペティション」というプロのバーテンダーだけが参加できる、カクテルコンペティションを主催しています。毎年、世界中で行われる地区予選を勝ち抜いた約40カ国の代表が世界大会で争い、1名の勝者が選ばれます。

 お酒のメーカーが主催するカクテルコンペティションは、他にもいくつかありますが、バカルディレガシーがユニークなのは、単にバーテンダーの技術やカクテルの味わいのみで優劣をつけるのではなく、「その一杯のカクテルが、世界中のバーでサーブされるようになり、モヒートやダイキリのような後世に残るレガシーカクテルになりうるのかどうか?」というポイントが軸になって勝者が選ばれるという点です。

 ですから、レシピにある材料は世界中で入手可能なものを使うことが重要で、世界のどこのバーでもサーブできる再現性がありながら、ユニークかつオリジナルなものでなければ勝つことができない、という実に難易度の高いコンペティションなのです。

 日本では、まず毎年9月にレシピの審査があり、そこから選ばれた20人が11月に開催されるセミファイナル大会に進みます。セミファイナルでは、5人のジャッジの目の前で実際に自分のカクテルをつくると同時に、カクテルに込めたストーリーをプレゼンテーションするというパフォーマンス審査を経て5人に絞られます。

 その5人のファイナリストは、そこから約3カ月かけて自分のカクテルを「プロモーション」しなければなりません。プロモーションとは何か? それは、まだ誕生したばかりのカクテルを自分のバーでサーブすることはもちろんですが、他店のバーに「ゲストバーテンダー」として出向いて、新たなお客さまにサーブしたり、何かイベントを開催して集まった人々にサーブしたり、その模様をFacebookやTwitter、InstagramなどのSNSで拡散したり、方法に制限はありませんが、要するに自分のカクテルを広めていくための活動のことです。

 5人には、バカルディより各自20万円の「プロモーション活動費用」が支給されます。ファイナリストは、その20万円を使って、ある人はカクテルのロゴデザインの作成費用にしたり、ある人はゲストバーテンダー活動のための移動交通費や宿泊費にしたり、ある人は広告枠を購入する費用にしたり、各自の考えるプロモーションを展開します。
2018年11月開催のセミファイナルを勝ち抜いた5人。
 

プロモーションを評価する「2人のジャッジ」

 そして2月に開催されるジャパンファイナルでは、11月のセミファイナルと同様のパフォーマンス審査に加えて、プロモーション活動を評価する「プロモーション審査」が行われます。

 2019年度のプロモーション審査のジャッジは、放送作家の小山薫堂さんと、バカルディレガシーの2012年の世界チャンピオンの後閑信吾さんのお二人にお願いしました。

 小山薫堂さんは「料理の鉄人」「世界遺産」「カノッサの屈辱」といった人気番組を手がけ、さらには出身地・熊本の大人気キャラクター「くまモン」の生みの親で日本各地のご当地キャラブームの先駆けとなっていることでも知られています。また、雑誌「dancyu」で長年「一食入魂」を連載していることでも知られる食通です。

 後閑信吾さんは2006年に単身渡米し、下積みを経てニューヨークの人気バー「Angel’s Share」のヘッドバーテンダーとなり、2012年にバカルディ・レガシーの米国大会で優勝。アメリカ代表として世界大会に臨み、そこでも見事優勝し世界チャンピオンとなりました。その後2014年に、バカルディレガシーでの自身の優勝カクテルでもある「Speak Low」の名前を冠したバーを中国上海にオープンさせ、2017年にはバー業界における世界的アワード「テイルズ・オブ・ザ・カクテル」で「インターナショナル・バーテンダー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。2018年には東京渋谷に日本での初店舗となるバー「SG Club」をオープンするなど、世界を舞台に活躍している現代のトップバーテンダーの一人です。

 2月21日のプロモーション審査では、5人のファイナリストが各自6分間の持ち時間の中で自分のプロモーション活動をプレゼンテーションした後に、質疑応答がありました。「もしあなたの目の前に神様が現れて、世界中の誰でも良いから1人だけ、1回だけ、おまえのカクテルを飲ませる機会を与えよう、と言ったとしたら、誰に飲ませたいですか?」というユニークな質問や「今日、もしあなたが日本代表に選ばれたら5月の世界大会までにさらにどんなプロモーション活動を行う予定ですか?」といった問いかけがなされました。
 
プロモーション審査の様子

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