ほろ酔いマーケティング談義 Tipsy Tips for Marketers #01

魅力的なカクテルから、ストーリーテリングの大切さが見えてくる【バカルディ 須田伸】

優勝カクテルを誕生させた言葉とは

 ジャパンファイナル当日、2月21日の午前中に実施されたプロモーション審査で高い評価を受け、同日の午後に行われたパフォーマンス審査でも審査員が一致して日本チャンピオンに選んだのが、青森県八戸市から参加した岡沼弘泰さんのカクテル「Evolver」です。

 ジャパンファイナルでの岡沼さんのプレゼンテーションは、自分の中にあった苦悩の正直な吐露から始まりました。

 「自分は、バーテンダーとして、ずっと世界で活躍する後閑信吾に強い憧れの心を持っていた。しかし、その憧れは、やがて、なぜ、自分は彼のようになれないのだ、なぜ自分は後閑氏のようにニューヨークや上海で活躍して、世界中の注目を集めていないんだ、という自分自身への鬱屈した気持ちになっていったのです」

 この岡沼さんの正直な気持ちは、時にソーシャルメディアで知人や友人の投稿を見て自分を比べて落ち込んでしまったりする、現代を生きる私たちの多くが共感できるものだと思います。

 バーテンダーの岡沼さんの「なぜ自分は後閑信吾ではないんだ」という気持ちは、アートディレクターなら「なぜ、自分は佐藤可士和氏のように活躍できないんだ」とか、ライフスタイルアドバイザーなら「なぜ、私は近藤麻理恵さんのように注目されないのだ」といったように置き換えられるかもしれません。そんな感情を抱えていた岡沼さんは、ある日、作家のアーネスト・ヘミングウェイの言葉に出会います。

「他人との比較において優れていることに気高さはない。本当に気高いのは過去の自分よりも優れた自分になることだ(There is nothing noble in being superior to your fellow man; true nobility is being superior to your former self.)」

 この言葉に出会った岡沼さんは「他人ではなく、昨日の自分を越えて行こうとする全ての人を応援する一杯」として、カクテル「Evolver(進化する人)」を創作し、バカルディ・レガシーに挑み、見事に日本チャンピオンに輝いたのです。
 
ジャパンファイナルでの岡沼さんのカクテルメイキング
 

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