ブロガー視点の「マーケティング徒然」 #02
DELLが「パソコン人気ランキング」で下位から上位になれた背景に学ぶ、覚悟と分析力【徳力基彦】
2019/03/27
あえて女性向けのWebサイトにした狙い
筆者が勤めるアジャイルメディア・ネットワークでは、デルが実施しているアンバサダープログラムの運営をお手伝いしています。個人的に驚いたのは、デルが制作したアンバサダープログラムのページがかなり女性を意識したデザインになっていること。一般的にパソコンの利用者は男性が多く、パソコンのWebサイトも男性向けのテイストになりがちです。ただしデルにおいては、デルが男性向けというイメージを変えていくために、まずはアンバサダープログラムのようなコアなファンが集まる場所から雰囲気を変えていく必要があると考えたのです。
その結果、デルアンバサダーにおける女性比率は着実に増加し、直近の数字では約30%に近づく勢いなんだとか。
実際に3月1日に実施されたデルアンバサダー2周年のパーティーにも多数の女性が参加していました。通常、パソコンメーカーのイベントは、男性が8~9割を占めてテックな雰囲気になりがちなのに対して、デルでは華やかな雰囲気になっているのが非常に印象的でした。
こうしたWebサイトやエンゲージメント重視の施策においても、デルは目標を設定したら、それを月単位や週単位に、場合によっては日単位や時間単位で分解し、定期的に達成率を確認しています。
その一方で興味深いのは、こうした新しい挑戦をする際に大事なのは、「覚悟」だとおっしゃっていた点です。
データは、あくまで過去を表しているもの、そのため新しい挑戦や未来はデータからだけでは見通せません。そこで大事になるのは、やはり担当者の「覚悟」なんだとか。
徹底したデータ分析を行い、そこから出てきた仮説を元に新しい挑戦を「覚悟」を持って実施し、その挑戦のデータを分析する。デルの強さは、このサイクルにあるのかな、と感じた逸話でした。
ある意味、デルは自らが確立したダイレクト・モデルやネット広告を活用したコンバージョン重視の施策の成功体験を疑い、「徹底したデータ分析」と「新しい挑戦を行う覚悟」を持つことで、現在の時代ひいては今の日本市場にあった新しいマーケティングポートフォリオを見いだすことが実現したと言えるでしょう。
日本の大企業には、いまだに昭和の高度経済成長期の成功体験に縛られて、従来の勘と根性に依存した営業モデルや広告宣伝のスタイルを続けている企業も少なくないようです。このデルの挑戦には、学ぶところが多いのではないかと思います。
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