マーケティングで社会課題を解決できるか #04

リクルート「男性の妊活」への挑戦、誰かを悪者にしないプロモーション戦略

「妊活もふたりで」

 「妊活における男性の不在」という社会課題に対するコミュニケーションを考えるときに意識していることは、「男性を悪者にしない」ということです。

 男性の当事者意識が低いのは、これまでに妊娠や妊活について情報を得る機会がなく、知識が少ないことが原因のひとつだと思います。決して男性自身のせいだけではなく、教育やメディアを含む社会環境も要因になっています。

 私が話を聞いた妊活中の女性でも「まずは自分が検査を受けてみて、問題がなければパートナーに頼んでみる」と話す方もいらっしゃいました。

 男性が妊活に取り組めていないという現状を責めても、前向きな変化はあまり望めません。むしろ耳を塞いでしまい、行動を起こしづらくなることもあるかも知れません。

 そこで「妊活もふたりで」というメッセージに私たちの想いを込めました。男女が出会い、色々な経験を重ね、家族になると決断するまで、ふたりで共に価値観を共有してきたはずです。妊活についても当たり前にふたりで考え、一緒に行動を起こしてほしい。これまで当事者意識が低かった男性を責めるのではなく、ふたりで一緒に取り組むために背中を押すお手伝いができればと考えました。

 2019年3月末に「ふたりの妊活」をテーマにした動画を公開したところ、SNSでは女性からの共感も多く寄せられました。


 

商品が受け入れられ、売り場が変化

 これまで妊活関連商品は女性向けのものが中心で、基礎体温計や妊娠検査薬、排卵日予測検査薬がドラッグストアなどで販売されています。基礎体温計は衛生用品売り場に置かれることが多いのに対し、検査薬はバースコントロールの売り場でコンドームの棚にひっそりと並んでいました。各商品がバラバラに置かれており、なおかつ検査薬は女性が立ち寄りにくい陳列となっていました。

 しかし、Seemの取り扱いがドラッグストアで始まったことで、店頭の売り場にも変化が起きています。これまで目立ちにくい陳列だった検査薬が、Seemと一緒に棚の上段に並ぶようになったのです。

 また、妊活関連のサプリメントとSeemを合わせて並べる店舗もあります。妊活商品のコーナーができたことで妊活中のお客様が必要とする商品を見つけやすくなり、棚としての売上もアップしました。



 Seemは精子の濃度と運動率を自宅で測定できます。そして、精子の状態は食事や運動、サプリメントなどの生活習慣で変化します。今後は、Seemで測定した結果をもとに、数値を改善するため関連商品を購入するという購買行動もつくっていきたいと考えています。
 
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