NO MONEY BUT LOVE. 意義ある地域案件に、クリエイティブはどう向き合うか。 #02

「何もなか」だった佐賀市がたった5年で、シティプロモーション先進都市になれた背景

5年間、エージェンシーとしてはビジネスになっていないという現実。


 シティプロモーションアドバイザーになると、年に10回ほど佐賀市を訪問し、打ち合わせやプレゼン、制作物の撮影や記者会見などを行う。

 佐賀市にある魅力にどう光を当て、価値ある情報として世の中に発信するか。その企画クリエイティブを一任されている。毎回いくつかのアイデアを出し、南雲室長を始め、職員とブレストし市長の合意を得て実施へと進む。

 実際のクリエイティブ制作では地元の広告会社とタッグを組み、撮影交渉やキャストの手配などを行っている。佐賀市は年間のプロモーション予算を細かく分けて先のように様々なネタをPRしてきた。裏を返せば一つひとつのプロモーション予算がものすごく少なく、平均200万から400万程度。正直、佐賀市のプロモーションで利益が出ることはほぼなかった。

 それは私だけでなく、制作会社やスタッフもそう。物理的に映像を制作するとなると、監督やカメラマン、キャストなどの人件費や渡航費、機材費、ロケ費、その後の編集費や音楽制作などを足しあげただけでもカツカツで制作管理費10%も厳しい世界である。

 本当に何度も低予算でやり抜いてくれた「佐賀愛」に溢れる仲間たちに感謝している。私は昨年の夏まで外資系エージェンシーに籍があり、クリエイティブを統括するマネジメントの立場だった。会社のクリエイティブ評価を上げることも大きな役割だったことから、利益が出なくてもやる価値があると判断し、事実、佐賀市のプロモーションで海外広告賞などを獲得してきた。

 本来であればエージェンシーとして企画費や進行マージンなどを請求するのが当然なのだが。楽しいからやる、意義があるからやる、そんな気持ちで駆け抜けた5年間。今の自分がこうしてコラムを書く立場にいることも佐賀市の経験によるところが大きい。しかしながら今、新しい環境に移り、このスタイルを見直そうと考えている。そもそもビジネスにならない地域プロモーションをクリエイターの個人の思いだけでやり続けるべきなのか?答えは分からないが、来月新しい会社を設立し、仲間たちとビジネスをつくっていく上で、地域プロモーションの産物を自分たちのビジネスにつなげる発想や仕組みを考えていく必要がある。

 例えば、先に触れた「名刺のり」の個人用名刺カスタマイズサービスは今もなお存在している。しかし佐賀市からのこのプロモーションへのサポート期間は終わり、誰もこのサービスをPRしていない。

 そこで、我々が主となり佐賀海苔の定期的な仕入れやレーザーカット技術を有する食品加工会社との事業化など、次なる展開をしてみたいと思う。自ら考えたアイデアを、育て、財産にしていく、そんな領域に踏み込んでみたいと考えている。そしてそれは、佐賀市にとってのPRにもなり、自分たちの新しいビジネスの創出にもなる、まさにWINWINな社会につながっていくことだと思う。
 
とにかくいつも楽しく関わってきた佐賀市のプロモーション。佐賀愛が凄いスタッフたち、南雲室長と。
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