NO MONEY BUT LOVE. 意義ある地域案件に、クリエイティブはどう向き合うか。 #03

「万事急須?」ペットボトル普及で衰退、バラバラだったお茶業界が踏み出した大きな一歩

急須で淹れる日本茶を「日常茶飯事」にしたいという想い。

 
淹れよう日本茶プロジェクトのコアメンバーたちと
 夏も近づく八十八夜~

 2月4日頃の立春から88日ほど過ぎた5月上旬、お茶の産地では茶摘みが始まる。この時期はお茶業界にとっての繁忙期である。しかし年々、茶葉の価格が低迷し、業界は衰退の道をたどっている。

 特に若い世代でお茶を急須で淹れる文化が希薄になり、急須の存在すら知らない人もいる。その一番の要因は手軽に飲めるペットボトルのお茶の普及にある。消費者が美味しい茶葉を求めることが減るにつれ、生産者も問屋も急須屋も業界全体が縮小し続けている。

 そんな危機的状況にも関わらず、それぞれがそれぞれの立場で現状維持のために動き、変わらず産地や地域名を宣伝するばかり。お茶業界がかつての輝きを取り戻すには、まずは業界関係者がひとつになり、世の中に今一度お茶の魅力や日本文化の素晴らしさを伝えるという共通目的を持ち活動を始めていくことが必要だった。

 5年前、友人である東京蒲田のお茶屋「蒲南茶荘」の4代目から上記のような業界の切実な話を聞いた時、自分が培ってきた地域プロモーションのノウハウを生かして日本茶文化の衰退を喰い止めるきっかけをつくりたいと考えた。

 さっそく4代目が所属する東京都茶問屋協同組合の会合に参加をして、まずはバラバラに動いているお茶業界を一つにするために、ビジュアルの作成を提案した。お金はないけど価値がある、またしてもそんな思いを抱き、ボランティアで動き始めた。
 
お茶業界をひとつにするために制作したビジュアル
「万事急須」
意味:ペットボトルの普及により、急須で淹れる日本茶が存亡の危機に瀕している状態。

というネガティブなキャッチフレーズで、急須がペットボトルのダイナマイトやピストルで今にも破壊されようとしているショッキングなビジュアル。これを東京都茶問屋協同組合が全国のお茶生産者や関係者を集めて行っている日本茶の品評会で披露した。ボランティアでの制作かつビジュアルのクオリティが高いこともあり、会場の人々は大いに賛同し、このビジュアルをお茶業界全体に拡げ一致団結させる狼煙として使用することになった。こうして2015年に「淹れよう日本茶プロジェクト」はスタートした。
 
2015年、東京都茶問屋協同組合主催の日本茶の品評会でビジュアルをプレゼン

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