マーケティングは、街にどう貢献できるのか #08

渋谷は川とともに発展してきた街。パブリックスペースの活用から見えた可能性

渋谷のプロジェクトから見えてきた可能性


 一連のプロジェクトは、スムーズに物ごとが進んだかのように見えて、実はその裏側で相当な時間と労力がかけられている。公共空間ということで、何をやるにも許可申請と説明が伴い、さらにそのプロセスには複数の管理団体との交渉が必要になる。道路と河川の法体系が異なるなど、複雑すぎていまだに理解できていない部分も多い。このプロセスの複雑さから後回しにしたり、保留にしたりと、何度も途中で諦めかけたがなんとかチームで連携して実現にこぎつけた。

 しかし、実施してみると、実りが多くとても勉強なり、行政や地元、企業との連携の仕方も少しずつ見えてきた。何ごとも諦めずやることが大事だと自分に言い聞かせている。

 さて、このような一般的な公園や広場でない公共空間で何かを行うときの課題は、やはり自立的な仕組みづくりだ。当初から、単発のイベントでは終わらない、継続的な取り組みを目指すと言ってきたが、果たしてこれをリードするのは誰なのだろうか。

 我々はプロジェクトを実施した約2カ月間で起きたことについて考え、これからを議論するために、「ストリートの未来を話そう~対話とアイデアでつくる渋谷川トークセッション~」を開催した。

 ライゾマティクス代表の齋藤精一氏のファシリテーションのもと7名の登壇者と地元からの参加者が渋谷川の歴史の振り返り、渋谷川リバーストリートの整備と活用、地域の未来像とアイデアの実現について議論した。オープントークセッションとしたことで、たまたま通りがかった人の参加もあり、議論の輪が広がった。
 

写真提供:Future Design Shibuya

 

これからに期待すること


 私は、これまで数多くの公共的な場所でイベントを実施してきたが、都心で開催することのハードルは高かった。地方は期待が高い分、許可の取り易さや行政からのサポートもスムーズで、継続展開も一度許可を得た後は、こちらが望む形でできた。イベントの話題性や集客性からもプロジェクトを活用して地域を盛り上げたいという期待があったからだ。

 ただ、やはり多くの集客を狙うイベントは、都心で行いたいといったニーズは常にあり、プロジェクトの特性に応じて場所の展開と特徴を考慮することが必要だ。

 まだ途中段階ではあるが、現在感じていることは、公に開かれた空間の活用は企業や個人においてもニーズが高く、もっと柔軟性を持ってイベントを開催することや自由に参加できる機会が必要だということだ。さらには地域とも連携して展開することができたら、そのエリアに個性豊かな新たな文化が育まれるだろう。

 しかしながら、実現するには展開の仕方をもっとわかりやすくして、その間を取り持ってくれる中間的な役割のニーズが高いと思う。公共空間の課題である自立的な仕組みづくり、つまり単発のイベントで終わらない、継続的な取り組みをリードしつつ、周りの人や組織がもっと参加できるような環境をサポートする機能が必要なのだ。
 

写真提供:Future Design Shibuya



 この実験は数カ月続くが、ようやくスタートしたばかりであり、今後の展開は持続的な活動にするための役割についても考え、次なる施策に生かしたいと思っている。

 未開拓だからこそ可能性がある、と思う。そして、都会の喧騒からちょっと息抜きできる街並みを渋谷につくる、つまりそれが街のブランディングにも多少なりとも寄与できたら、一人のマーケッターとしても本望である。

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