音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #06

マーケターには、企画を通すための「人間力」が必要ですか?【音部大輔】

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仕事で確固たる軸がないあなたへ。音部さんが大事にしている3つの考え方

【質問】

 マーケティング部門が企業内の一組織である以上、社長はじめ経営陣、営業などの他部門といった、縦や横との連携が必要になると思います。

 そうなると、企画を通すために必要なのは、これら組織との良好な関係であって、実はマーケターに何よりも「人間力」や「胆力」が求められると思いますが、音部さんはどう思いますか。
 

「合意形成」は、一部のプロセスでしかない


 良好な関係性にのみ依存して合意された企画が果たして高確率で成功するものかどうか、悩ましいところです。

 ブランドを持続的に成長させるためには、消費者理解による戦略を策定し、戦略に則ってマーケティング活動を立案できることも、とても重要だと考えます。実行する際の諸部門の説得や合意形成も重要ですが、これは企画全体から見れば一部のプロセスです。

 合意形成は、人間的魅力と関係構築でするのもいいですが、理路整然と合理的な判断を促すもよし、個々人が得られる報酬を示すもよし、他にもやり方はいろいろありそうです。各々の説得者の道徳と美学を満たす効率のいい方法がいくつもあることでしょう。

 企画がなかなか承認されないと、「企画を通すことが重要で、そのためには良好な関係こそ必要」と考えてしまうかもしれませんが、そもそもの企画の目的は、企画を通すことではなく、市場での成功のはずです。

 「関係を良好にして企画を通すために、人間力と胆力が何より大事」というのは市場での成功を目的とするならば、少し心もとない認識であるように思います。

 言うまでもなく、人間力も胆力もあったほうが人として素敵です。同時に、人間力も胆力も人並みだけど、輝かしい実績を持つ優れたマーケターという方も少なからずいらっしゃいます。

 それぞれのプロフェッショナルが、自身で納得のいく説得や効果的な合意形成の方法を確立できるといいですね。多様性と個性を活かして、いろいろな方法があるだろうと思います。
 
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