ほろ酔いマーケティング談義 Tipsy Tips for Marketers #03

ハイボール生みの親、トミー・デュワー 脅威の発想力「21世紀の広告手法を19世紀に展開」

知人の「鉄鋼王」カーネギーを利用、アメリカ大統領にウイスキーを送る


 そしてデュワーズが爆発的に成長するきっかけとなったのは、ロンドンではなく米国ニューヨークの港で起きたある事件でした。

 トミーは親交のあったスコットランド出身の米国の実業家、アンドリュー・カーネギーに「私の友人であるベンジャミン・ハリソン米国大統領に最良のスコッチウイスキーを送るように」という手紙をデュワーズ社宛に書いてもらうことに成功します。
 
アンドリュー・カーネギーの署名入りのレターで「最良のスコッチウイスキーを米国大統領に送るように」と記されている

 この手紙を受けて、デュワーズ社は自社のスコッチウイスキーの樽詰めを米国に向けて発送したのですが、事件はこのウイスキーが船から降ろされたニューヨークで起きました。

 「米国産のバーボンや、ライウイスキーを応援すべきアメリカ大統領が、スコッチウイスキーを買い求めるとは何事だ!」という非難が、当時の米国の新聞や雑誌を通じて全米に広まったのです。

 いわゆる今日でいう「炎上騒ぎ」です。しかし、これにより「本来バーボンを飲むべき米国大統領がそれでも欲しがったスコッチウイスキーのデュワーズというのは、いったいどんな味がするのだろうか?」という人々の興味を喚起し、米国でデュワーズは爆発的に売れるようになったのです。

 後にトミーはこの騒動を振り返り「あの事件の素晴らしかったことは、全米中にデュワーズの名前を知らしめた上に、お金がまったくかからなかったことだ」と語っています。
 

旅行記「A Ramble Round the Globe」がベストセラーに


 全米で売れるようになったデュワーズを他の地域でも売れるようにするために、トミーはセールスマンとして世界中を旅しました。横浜と長崎にも立ち寄って日本でのデュワーズの販売の足掛かりをつくったことが記録に残っています。

 広告クリエイターでもあるトミーがその旅行で見聞したことを、すぐさま広告に生かしたのは当然のことでした。
 
エジプトでラクダにまたがるトミー・デュワー
 
後に展開されたデュワーズの広告作品

 さらにトミーは自分が世界中を訪ねた際のメモをもとに「A Ramble Round the Globe」という旅行記を出版し、大ベストセラーになりました。書籍の売れ行きを見たトミーは、この書籍とデュワーズをセット商品にして販売するなど、「コンテンツマーケティング」などという言葉のない時代に、自らコンテンツを生み出し、自社製品のセールスにつなげていったのです(※「A Ramble Round the Globe」は、Amazonで買うことができます)。

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