成長企業から考える「マーケターの定義」 #06

必要なのは、競合? 現代における新市場創造とブランディングのための方法論

前回の記事:
決められた仕事以外しない傾向が強い外資で、僕が職務要件を越えて働く大事な理由

「ある領域」の業務経験がないマーケターが増えている


 最近、ブランディングや市場創造というキーワードを、カンファレンスなどでよく耳にします。僕自身もこれらのテーマで講演を依頼されることがありますが、実際はその位置付けを明確にしないまま、なんとなく自身の業務事例を紹介しながら、プランニングや思考プロセスを共有することで、講演をこなしているような気がしています。

 今回のアジェンダノートでは、そんな自身の反省も踏まえ、そもそも市場創造やブランディングとは何なのか?なぜ今これらがホットトピックスとなっているのか?そして、市場創造とブランディングを行う際に意識すべきことは何か?に関して、少しお話ししたいと思います。

 僕がマーケターとしてのキャリアを歩んできた直近15年間は、マーケティング界の変革期でした。簡単に言うと、それはデジタル化の影響であり、デジタルマーケティングやデータドリブンマーケティングといったものが台頭し、それらの対立概念のような形でマスマーケティングやブランドマーケティングが語られるようになりました。

 戦略こそがマーケティングの要であり、デジタルマーケティングはあくまで戦術のことである、と論じる人もいれば、全てのマーケティングはデジタルマーケティングの中に取り込まれる、と言う人もいます。

 そういった各論の正当性はさておき、事実としてあるのは、デジタルマーケティングの隆盛と共に「ユーザーインサイトをどう見つけるか」「戦う市場を規定しポジションをどう取るべきか」「ブランドをどう創っていくのか」といった領域の業務経験がほぼないマーケターが増えてきたということです。



 効率化を追求するフェーズにおいては、それでも問題はありません。ですが、認知などの上位ファネルを拡げないとサービスがグロースしない、マスとデジタルの統合コミュニケーションの設計がターゲットアプローチに不可欠である、といったような状況が生まれ、冒頭でお話ししたようにブランディングや市場創造というテーマへの興味関心が高まっているのだと思います。

 マスコミュニケーションの設計には、ユーザーインサイトを突いたブランドのキーメッセージを開発することになるので、ブランディングという概念を理解しないと、そもそもコミュニケーションの設計ができません。

 ただし、僕がこの原稿でやりたいことは、デジタルマーケティングしか経験してこなかった人に向けてマスマーケティングやブランディングの教科書的な視点を伝えることなのかと言えば、全くそうではありません。むしろ、現代の統合されたマーケティングにおいて、市場創造やブランディングを行う際の思考法やアプローチをどのように活用すれば良いのか、という具体的な話を伝えようと思っています。

 この辺りのことを、今回は触りだけですが、共有したいと思います。重要なのは、僕の持論を理解してもらうことではなく、議論が始まるきっかけをつくることです。

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