マーケターズ・ロード 湖池屋 佐藤章 #01
日本企業に「プロマーケター」はそぐわない、和風マーケティングのススメ。 湖池屋 佐藤章社長
「プロマーケター」では、打ち手が“金太郎飴”になりかねない
——昨今、日本のマーケティング業界では、外資系企業出身のプロマーケターがさまざまな業種に入り込んで活躍しています。
私自身もそうしたプロマーケターと一緒に仕事をして、成果を出してきました。しかし、語弊を恐れずに言えば、企業がそうした方法論しかないと考えるのは、正しくないと思っています。
少なくとも日本企業に合っているかどうかという観点で言うと、「マーケティングに専門特化したプロを育てる」というのは賢明でないように思います。ともすると、マーケティングの打ち手が“金太郎飴”のようになっていきかねない。
成功パターンをフレーム化して、再現性を高めることが重要だという、昨今のマーケティングの論調があります。しかし、そんなことが果たして本当に可能なのでしょうか。
商品が生まれて、売れる兆しが見えるか見えないかというタイミングで、すでに他社も似た商品を売り出しているような時代です。フレーム化した戦略で商品をつくっていては、どんどん追随されて、マーケットは既視感のある商品で埋め尽くされてしまうのではないでしょうか。
最後の最後に勝つ商品は、「本物だと思えるもの」「自分にとって貴重だと思えるもの」です。商品ジャンルを問わず、お客さまは、良いものなら高くてもいいと考える時代になっているんです。フレーム通りの戦略で、魂のこもっていない、いい加減なものをつくっても、見透かされてしまうと思います。
それに、マーケターになりたいなら、マーケティングだけをやっていては、ダメな時代だと思います。デザイン、プロモーション、PRなど、これまでもマーケターは領域を横断した知識や経験が求められてきましたが、今後はそれすらも超えて、もっと外に目を向けて足を踏み入れていかなければいけません。
例えば、これだけイノベーションが起きないと言われる菓子マーケットにおいてお客さまから選ばれる商品を生み出すためには、R&D領域にも理解がなければいけないでしょう。「大量生産」が従来のビールのマーケティングの基本中の基本でしたが、いまでは様変わりしています。100キロが当たり前だった仕込みの量が50キロ、20キロ、5キロと減ってきている。そうした製造工程を知らなかったら、マーケターは務まりませんよね。