成果を出すコンテンツマーケティング虎の巻 #02

PV 450倍、自然流入5000倍。KDDIのオウンドメディアは、どのように読まれるようになったのか

前回の記事:
auの企画メーカーが語る、モノゴトを多面的に見るための「3つの考え方」

「この媒体、やめましょう」課題からのスタート

 
TIME&SPACE

 前回は、私なりの企画やコンテンツのつくり方や考え方について、3つの考え方を具体的な事例を使ってお話させていただきました。今回は、その考え方をベースに運営している「TIME&SPACE」というオウンドメディアについてお話ししたいと思います。

 KDDIが運営する「TIME&SPACE」の歴史は古く、広報部管轄で2000年10月に冊子としてスタートしています。その後、Webサイト化されて2014年に私が引き継いだのですが、当時は月間数千UU(ユニークユーザー)のうちauユーザーが9割以上でした。

 読者のほとんどは社員だろうなと感じて、上司への最初の提案は「この媒体、やめましょう」でした。リソースを他に回すべきだと思ったのです。

 しかし、経営層からの「広報や宣伝活動に加えて、情報発信手法のひとつとして自社発信力を強化していくことが重要になる」という考え方に共感し、大転換して立て直そうと覚悟を決めました。

 最初に“目指すべき姿”を整理してゴール設定し、中期計画を立ててやるべきことをロードマップに落とし込みました。

 結論から言うと、この5年でPC/モバイル閲覧比率が逆転し、UU(ユニークユーザー)が400倍、PV(ページビュー)が450倍、検索などによる自然流入数は実に5000倍に伸びました。
 

コンテンツ力をつける3つのこと


 私が引き継いでからの5年間、反省や失敗も多く、日々勉強しながらトライ&エラーを繰り返しています。その中で少し見えてきた改善に効く「3つのポイント」をご紹介します。

 ① 徹底した生活者視点の切り口

 企業が言いたいことを伝えるのではなく、生活者のインサイトを切り口や文脈にしてコンテンツ化することから着手しました。その結果、検索流入を始めとするUUが指数関数的に増え、広告に依存しない「筋肉質なマーケティング活動」につながり始めています。

 例えば、auには「世界データ定額」という980円/24時間で海外でも日本と同じようにスマホが使えるサービスがあります。サービスサイトでは、訴求ポイントやスペックを分かりやすく掲載していますが、TIME&SPACEではそれらを一方的に伝えないように意識しています。

 例えば、「海外旅行でもスマホ使いたいけどよく分からない」「高額請求されないか心配だ」といったインサイトを切り口にしました。その結果、検索サイトで「海外 スマホ 高額請求」で検索すると1位と2位に、「海外 スマホ」では2位にTIME&SPACEの記事が出てきます(2019年6月時点)。
 
▲au公式サイトでの訴求
 
検索結果の1位、2位がTIME&SPACE記事

 また、記事自体は約2年前に公開したものですが、月日がたっても毎回、海外旅行シーズンなどに“ゾンビ”のように出現し、いまだに読まれ続けています。Webコンテンツならではの現象ですよね。

 他にも「iPhone 機種変更」「Google HOME」などで検索しても上位表示されます。ポイントは、この効果はサイトPV/UUが伸びるということより、生活者に当社サービスや企業姿勢に触れてもらえるタッチポイントが増えることです。

 つまり、広告や広報活動ではなかなかリーチできない、しかも生活者が興味を持って能動的に来てくれる接点をつくり出すという、マーケティング活動としての効果なのです。

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