ほろ酔いマーケティング談義 Tipsy Tips for Marketers #04

もし自社の商品が突然、違法になったら? 禁酒法時代に学ぶ「不確実な時代」のサバイバル術

前回の記事:
ハイボール生みの親、トミー・デュワー 脅威の発想力「21世紀の広告手法を19世紀に展開」

バカルディに禁酒法という悪夢が降りかかる


 日頃、ニュースを見ていて「自分がこの会社のマーケティング担当者だったら、どうするだろう?」と想像をめぐらすことがあります。

 最近だと「もし自分がファーウェイのマーケティング担当だったら、今、何をするだろう?」と思いました。

 ツイートひとつで貿易交渉の相手国への関税を引き上げたり、この前までロケットマンと揶揄していた人物との会合を実現したり、無人偵察機を撃ち落としたことへの報復攻撃を直前で回避したことを明かしたりする人物がホワイトハウスの主である今は、さまざまな事象の不確実性が高まっているように感じます。

 皆さんは、自分の会社の商品の最大のマーケットが突然、その商品カテゴリをすべて違法と定めて輸入を禁止にしたら、どのように対応しますか?

 時は1920年。キューバの地に創業して約60年、米国でのラムの販売拡大を喜んでいたバカルディ社にこの悪夢が降りかかりました。

 そう、米国政府が禁酒法の制定を宣告したのです。
 
禁酒法の制定後に、樽の中の酒をマンホールから廃棄する人と見守る行政執行官(米国議会図書館所蔵写真)
 

パンナムとバカルディの共同広告キャンペーン


 この一大事に対して、バカルディ社が打ち出した策は、「自分たちの商品を最大マーケットに輸出できないなら、自分のところに最大マーケットを呼び込もう」というものでした。

 米国の航空会社パンナムと共同で行ったキャンペーンのポスターをご覧ください。



 アメリカの象徴であるアンクルサムがグラス片手に黒いコウモリにつかまってフロリダ半島からキューバに向かい、キューバの地ではココナッツの木につかまった男性がバカルディラムのボトルを抱えています。「お酒を飲むために、キューバに旅行しませんか」というキャンペーンを仕掛けたのです。

 やがて米国の富裕層を中心に、週末ごとにキューバにわたりお酒も音楽もパーティーもたっぷり楽しんで、月曜日までに帰国するという人たちが急増します。当時、米国からキューバへの旅行者数は、禁酒法制定以前の年間4万5千人から年間9万人に倍増したのです。

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