マーケティングで社会課題を解決できるか #05

リクルートで「ふたりの妊活」を考えながら見えてきた、PR活動で大切なこと

良いPRのためには、世の中のためを想って企画する


 良いPRを実現するためには、世の中のためを想うことが大切だと思います。もちろん、時間とお金をかけて自分のブランドや商品、サービスのために施策を企画するので、PRの目的は自分たちのためです。しかしそれを大前提として、PR施策を考えるときには徹底的に世の中のためを意識すべきです。

 独りよがりの情報を提供するのでは、それが多くの露出を獲得できたとしてもやはり一過性のものに終わってしまい、世の中の意識を変えることはできません。本当に世の中のためになる情報を提供できれば、それが議論を呼び、共感を拡げ、世の中の流れを変えるきっかけになります。
 

あるタンポンサービスの事例




 世の中の流れを変えた例として、今年のカンヌライオンズでPR部門のグランプリを獲得したドイツの「THE TAMPON BOOK」があります。これはタンポンのサブスクリプションサービスを提供している企業の施策でした。

 ドイツの消費税率は19%ですが軽減税率が導入されていて、生活必需品では7%に抑えられています。1963年に連邦議会で税率が決められた際、議員は全員男性でした。そして女性にとって生活必需品である生理用品の消費税率は19%に決定されてしまったのです。

 THE TAMPON BOOKは消費税率が7%である本に目をつけ、本の中にタンポンを入れることで7%の消費税でタンポンを買えるようにしたアイデアです。そしてその本の中ではカジュアルなイラストとテキストで、現状のジェンダーギャップや税制度に対して問題提起しています。



 THE TAMPON BOOKは非常に大きな反響を呼びタンポン入りの本は1日で完売、インフルエンサーだけでなく女性政治家もTHE TAMPON BOOKをSNSでシェアし、インターネット上の署名も15万件を超えました。

 この事例ではタンポンのサブスクリプションサービスが解決できる課題や提供価値を直接伝えるのではなく、ジェンダーギャップや女性の負担という世の中の課題にフォーカスすることで大きな共感を得ることができました。着眼点の素晴らしさはもちろん、プロダクトやムービーを非常に完成度高く仕上げた点も世の中の意識を変え、議論を巻き起こす上で重要だったと思います。結果として、企業やサービスの認知や好感度は大きく上昇しました。

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