SPECIAL TALK

小説家・平野啓一郎 プロマーケター・富永朋信 対談「3000万円の新聞広告で、慈善事業を紹介する企業はカッコいい?」

企業による「慈善事業のアピール」は、カッコいい?


富永 自慢する人って、総じてカッコよくないと思うんですが、企業は「去年は、いくら寄付しました」や「森に木を植えました」といった新聞広告をするじゃないですか。それは、どう感じますか?

平野 いいことをしているなら、言うべきだと思います。

富永 それは、カッコいいことだと思います?

平野 世の中の認識を広げることは大事なので、企業が広告を通じて外に発信することは大事だと思います。もちろん、その内容がばかばかしいと、ダメですけど。

それに、言い方にもよりますよね。「俺は、すごいだろ」と言うとカッコ悪いですが、何のために取り組んでいるのか、社会に対する提案であれば、言ったほうがいいと思います。



富永 例えば、新聞に全面広告を載せると、少なくとも3000万円から4000万円は掛かります。それだけのお金を寄付したら、もっと救われる人が増えるという意見もあると思うんです。

平野 たしかに、どんなに善意で行っていることでも、非効率的なお金の使い方だとカッコ悪いですよね。ただ、3000万円をどこかに寄付するよりも、新聞広告を打つ方が活動に広がりが生まれて、最終的に効率的だという見方もあると思います。

富永 効率性が大事というわけですね。

平野 最近、臓器移植が必要な子どもが日本ではドナーの数が少ないため手術が受けられず、米国に行くための数億円を起業家が寄付したことがネット上で批判されていました。そのお金を使って、日本で臓器移植が活発になるための活動をする方が世の中のためになる、と。

同じように善意であっても非効率であったり、十分に思慮されていなければ、ダサく見えてしまうという風潮はあると思います。

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