SPECIAL TALK

小説家・平野啓一郎 プロマーケター・富永朋信 対談「3000万円の新聞広告で、慈善事業を紹介する企業はカッコいい?」

現代のカッコいいは「知的」でもある


富永  同じようなことは、他にもありそうですね。



平野  「24時間テレビ」も同じですよね。番組をつくるなら、その制作費をそのまま寄付すればいいのでは、という意見があります。それも番組としての効果と、その制作費をそのまま寄付することのどちらか効率的かという話だと思います。一般の人もそうした視点から、企業の取り組みを見ているのではないでしょうか。

富永  すごく大切なポイントですね。企業は何をやるにしても、どうしてもお金のにおいがして、“嘘くさく”見えてしまうんです。それは、鼻がもげるぐらいにカッコ悪いことです。

でも、そう見えてしまうことを自覚した上で、社会に対するインパクトをきちんと計算して取り組めば、カッコよく見える可能性があるわけですね。
 
『「カッコいい」とは何か (講談社現代新書)』平野 啓一郎氏・著

平野  現代のカッコいいは、知的でもあると言えます。色々な情報を知って、その上で状況判断して、正しいと思うことを行うわけです。なので、がむしゃらに何かに取り組んで、それをアピールしてもカッコいいとは、ならないと思います。

今はインターネットで色々な情報が出てくる時代です。例えば、どんなに利益をあげていても東南アジアの工場で現地の人を低賃金で働かせていれば、社会的に許されませんし、カッコよくはありません。

毛皮も同じです。動物への虐待が批判されて、毛皮を扱わないファッションブランドが増えていますよね。そうした流れを企業は止められないと思います。

※後編「日本の家電があえてダサくなってしまう背景とは?」に続く


 
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