PHOTO | Red Bull Content Pool
マーケティングは、街にどう貢献できるのか #01

レッドブルCMOが、次の仕事に「渋谷のまちづくり」を選んだ理由

レッドブルの特殊なマーケティング手法

 レッドブルは、基本的には単一商品「レッドブル・エナジードリンク」の展開に集中している。それをリスクが高いと見るか、面白いと感じるかは、人それぞれの捉え方次第だ。

 私が入社した2007年は、一般消費者には海のものとも山のものともつかない無名のブランドだった。そもそもエナジードリンクという言葉さえ浸透していなかった。

 世界トップ3に入る市場規模で、国産飲料メーカーが数多く存在し、競争が激しい日本。他の市場よりも遅く参入したことは、レッドブルのオーナーであるディートリヒ・マテシッツが、日本で成功できる可能性を慎重に見極めていたからに違いない。

 レッドブルに入社して、自分のこれまでの経験が半分以上、使えないことに愕然とした。当時の上司から最初に言われたのは、BMXフラットランドのOne on Oneコンペティション「Red Bull Circle of Balance」というイベントのコミュニケーションを積極的に行い、ブランド強化と消費者の獲得につなげることだった。

 そもそも商品の話が全く出てこないことに驚いた。さらに、この競技の存在も知らず、それを誰にどのように伝えるのか、どうすれば商品の売りにつながるのかが想像できなかった。

 しかしイベント当日、驚いたことに、会場には人があふれ、レッドブルを片手にファンが熱狂していた。この経験を通して、コアなシーンとのファン形成の面白さと重要性を学んだ。
 
出典:Red Bull Content Pool

 レッドブルが日本で根付くことができた背景には、大手企業が見向きもしない人たちと一緒に成長してきたからだと信じている。ブレイクダンス、フリースタイルモトクロス、フリースタイルフットボール、エアレースなど、手がけてきた多くのプロジェクトはシーンが全く確立されていなかった。

 イベントの集客がうまくいかず、悩んだことも多々あった。しかし一過性で終わらず、継続的に活動した結果が、現在も各シーンでレッドブルが支持されている要因だと思っている。

 そして、メディアとの連動性もひとつ大きな点かもしれない。自分たちで映像や写真をもとにストーリーを作成し、一つ一つのメディアに配信し、彼らのニーズに合うように対応した。

 当初、私自身もメディアでもない企業が、ここまで映像や写真にこだわるのかと戸惑ったが、コンテンツを制作して配信し、ストックしていくことで、じわじわと効果が出てくることを体感した。

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