ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #07

反対意見を言う人は敵だ、とは思いたくない。『カメラを止めるな!』上田監督の信念

強烈な罵倒をする人も、最大の味方になりえる

徳力 否定的な声も受け入れるということですが、上田監督が観客とコミュニケーションをとるときに気をつけていることはありますか。

上田 答えになっているかは分からないですが、僕は「反対意見を言う人は、全面的に敵だ」という極端な考え方に抵抗があるんです。

例えば、考え方が違う人同士が批判しあっているとする。でも、その二人は、同じ食べ物が好きで、その話題では一緒に盛り上がれるかもしれない。それなのに鼻から「あいつとは理解しあえない」「あいつの全てが気に入らない」という姿勢は違うんじゃないかな、と。



徳力 ひとつの意見が違うだけなのに、その人の全部を否定してしまう人が増えている印象はありますね。

上田 そうです。だから自分のことをTwitterで攻撃してくる人に対しても、勝ち負けの戦いをしたいとは思わないですね。

それに先ほど、僕がSF小説を出版して炎上したときに一番叩いていた人が『カメ止め』がヒットしたときに、「ただのビッグマウス野郎だと思っていたけれど、やったんだなお前は」みたいなコメントをしてくれたんです。

徳力 いい話ですねえ。

上田 だから、強烈な罵倒も関心の表れなので、将来的には最大の味方になりえると思っています。クリエイターとしては、「観てきたけど、感想はまあいいや」と突き放されたり、無視されたりするのが一番きついですね。

あとは、嘘にならないように自分が納得できる発信も意識しています。自分の知名度が上がったとしても、自由は失いたくないと思っています。

徳力 それは、本当に難しいですよね。今後、上田監督がそのバランスをどのようにとるのか興味があります。だから、「#イソップ賛否の否」をしたことはすごいことだと、つくづく思います。


 
上田 もちろん映画の賛否を問うこと自体に賛否がありました。クリエイターは「賛」だけを目指すべきだから、「否」を求めることは自信がないことの表れなんじゃないか、という意見もありました。

徳力 上田監督の監督人生は長く続くけれど、配給会社はこの瞬間にこの映画を最大限売らないといけないという十字架は背負ってますもんね。だから極端な話、おおげさな嘘をついてでも話題にしないといけない、と考えがちな傾向はあると思います。

でも上田監督は、フラットに意見をもらうことは無視されるよりも意味はあるし、少なくとも次への糧になるという視点なんだと感じました。

 ※ 後編「普通、そこまで監督がやる? 『カメラを止めるな!』 上田慎一郎が伝授するTwitterプロモーション」に続く
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