ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #08

普通、そこまで監督がやる? 『カメラを止めるな!』 上田慎一郎が伝授するTwitterプロモーション

前回の記事:
反対意見を言う人は敵だ、とは思いたくない。『カメラを止めるな!』上田監督の信念
 低予算のインディーズ映画ながら、全国300館以上で上映され異例の大ヒットを記録した『カメラを止めるな!』。監督の上田慎一郎氏は、どのようにTwitterを活用して、ファンと丁寧なコミュニケーションを図っていたのか。前編に続いて、アジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦氏が詳しく話を聞きました
 

上田監督がハリウッド映画の宣伝を担当したら

左から上田慎一郎氏と、徳力基彦氏。

徳力 
もし、上田監督がいわゆるハリウッド作品のようなメジャー映画のプロモーションを担当することになったら、どういう挑戦をすると思いますか。

上田 観客に知られている映画か、まったく知られていないかで違うでしょうね。知られている映画であれば、公開する情報を制限して観たい人がジリジリするような状況をつくって、公開日に一気に爆発させる流れですよね。でも、これは『天気の子』や『シン・ゴジラ』みたいなメジャー映画だけができる手法でもあります。
上田慎一郎氏1984年滋賀県出身。中学生の頃から自主映画を制作し、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。 2010年、映画製作団体PANPOKOPINAを結成。現在までに8本の映画を監督し、国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得。2015年、オムニバス映画『4/猫』の1編「猫まんま」の監督で商業デビュー。長編映画『カメラを止めるな!』が大ヒットを記録。10月には映画『スペシャルアクターズ』が公開予定。

徳力 ベースとなるファンがある程度いる場合ですね。無名の映画が何の情報も出さなかったら、そもそも誰も観に行ってくれませんし。

上田 そうです。なので、知られていない場合は、まず面白い映画をつくることが大前提ですが、公開日までできるだけ情報をオープンにして、試写会を通じて多くの人に観てもらうと思います。そして、まだ観ていない人に早く観たいとワクワクして待ってもらって、公開して一気に爆発させたい。

徳力 
映画のテレビCMで使われる「全米No.1」といった常套句がネット上では、よく揶揄されます。こうした映画のプロモーションについては、どう思いますか。

上田 
真実を隠せない時代ですよね。テレビCMで「大ヒット上映中」と言っても、本当にヒットしているかは、調べればすぐに分かります。それよりも僕は「ぼちぼちヒット中」と言った方が信じてもらえると思います。

徳力 正直ですね(笑)。でも確かに、映画業界のプロモーションは、従来の常識としてのテンプレートがしっかり決まっている印象がありますよね。
徳力基彦氏
ピースオブケイク noteプロデューサー/ブロガー 
アジャイルメディア・ネットワーク アンバサダー/ブロガー
NTTやIT系コンサルティングファームなどを経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。2009年2月に代表取締役社長に就任し、2014年3月より現職。2019年6月末で取締役を退任、7月から現職。同月、ピースオブケイク noteプロデューサー/ブロガーにも就任。

上田 そうですね。宣伝は映画と同じように、もっとクリエイティブであっていいと思っています。作品に負けないくらいの気持ちで一緒に面白い宣伝をしかけたいですよね。

徳力 上田監督自らプロモーションについて関わることはありますか。

上田 
10月に公開する映画『スペシャルアクターズ』では、僕が監督に加えて宣伝プロデューサーも担当しています。公式Twitterの運用は、松竹の方が担当してくれているのですが、恐縮ながら結構ダメ出しもさせてもらってます。
 
映画『スペシャルアクターズ』

先日は、上映開始日、上映館、完成披露試写の3つの情報が解禁されたのですが、これらをすべて個別のツイートで発信していたんです。でも、それでは拡散した時に伝わる情報も分散してしまうので、ひとつのツイートにまとめて、さらに予告編の動画もつけて投稿してほしいと伝えました。

あとは、コアタイムに自分の投稿をリツイートをして、タイムラインの一番上に表示させるようにしてほしいとも言いました。

徳力 こんな細かいTwitterの仕様に指示を出す映画監督は、普通いないですよね(笑)。

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