ほろ酔いマーケティング談義 Tipsy Tips for Marketers #05

「テレビCM崩壊、せず」事実を冷静に見つめる目が必要 平成のマーケティングトピック その1

マーケターに必要な事実を冷静に見つめる目

 もう1つ見逃せないテレビCMの現在も維持しているもうひとつのパワーが、流通チャネルへの影響力です。「この新商品の広告には2000GRPのテレビCMを全国規模で4月上旬の2週間放映します」、といった情報が商談資料に乗ることにより、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストアといった流通チェーンへの商品の配荷促進や陳列スペースの確保に大きな影響力を持つ事実は、こうした流通チャネル経由で販売されている商品のマーケティングに関わっている人の多くが実感している事実だと思います。

 これは以前から言われてきたテレビCMの持つBtoCではなくBtoB的なメディアパワーですが、令和の現在においてもまだこのパワーは健在です。

 私も現在の勤務先であるバカルディジャパンにおいてスコッチウィスキーのデュワーズのテレビCMを昨年の秋から放映することで、デュワーズを販売する流通チャネルが大幅に拡大し、新しい層の方々に商品を試していただけることにつながっています。また定期的に行っているブランド認知調査においても、テレビCMの放送開始以降、確実に認知度も、好意度などの各項目においてもすべて上昇しています。
 

 もっともアサヒスーパードライ担当時代の「CMの投下量にものを言わせて消費者がビールを鮮度で選ぶように消費行動を変容させる」というような予算もなければ、時代も違いますので、「デュワーズという選択もなかなか面白いと思うので、もしよろしければお手に取ってください」といったソフトな話法にしています。

 では、テレビCMがこれから続く令和の時代においても現在の特別な地位を持ち続けるのでしょうか?

 私には現時点ではわかりません。

 日本においても、NetflixやAmazonプライムビデオ、AbemaTVといったネット配信の映像番組を視聴する習慣を持つ人が増えてきました。他ならぬ私自身もNetflixで「ストレンジャーシングス」や「全裸監督」を大いにエンジョイし、吉本興業の反社会勢力との交際問題が浮上した際にはAbemaTVで長時間の記者会見を見続けました。

 さらに令和の時代においては、上記のような既存のプレイヤーに加えて、平成の時代に誕生し多くの視聴者を獲得したYouTubeやニコニコ動画のような、新たな令和のプラットフォームが誕生していくことでしょう。そうした中で、テレビ地上波のCMが徐々に影響力を落として行くというシナリオは十分に考えられます。

 しかし、マーケターとして重要なのは「テレビCM崩壊」といった未来予想に関するテクストを今すでに起きている事象であるかのように早とちりせず、かといって逆に現状維持に終始するゆでガエルにもならず、最適のタイミングで切り替えが出来るように準備をし、適切な規模の予算を新しいメディアや手法に実験的な意味を込めて投資して、知識レベルをアップデートしておくことだと思います。

 簡単なことありませんが、時代に合わせて自らを柔軟に変えていくことも、令和の時代を生きるマーケターの重要なスキルセットです。

 さて、今回は私が選ぶ平成のマーケティングトピックその1「テレビCM崩壊、せず」を紹介しました。次回は私が選ぶ平成のマーケティングトピックその2「オンラインCGMの誕生と爆発的成長」を論じたいと思います。

 最後に、今回私が紹介するカクテルは 「バカルディ8ラムオールドファッションド」です。
 
<材料>
バカルディ8 45ml
アンゴスチュラビターズ 2ダッシュ
水 1スプラッシュ
砂糖 1tsp
オレンジの皮 1枚
作り方
グラスに砂糖、水、ビターズを入れ、マドラーでステア。
氷を入れ、バカルディ8を注ぎステア。
オレンジの皮を絞った後にグラスに入れる。



 1900年代にニューヨークで生まれたこのカクテルを飲みながら、往年のマディソン街で生きる広告マンたちを描いた『マッドメン』を見てみてはいかがでしょうか?

 古きを知り、新しきを考える、そんな時間に最適のカクテルです。

 Enjoy Cocktail!  Enjoy Life!!
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