塾長対談 #01
足立光×伊東正明 対談:次の時代を担うマーケターは、どう育成する?
アイデア発想の秘訣は、ロジックを持ち、アンテナを張ること
――お二人のお話を伺っていると、順番としてはロジックで方向性を導き出してからアイデアを考えるという流れに感じましたが、逆に飛び抜けたアイデアを考えてからロジックに落とし込むという方向はないでしょうか。伊東 ないかと言えば、ある。あるんだけど、「これ、いけるんじゃない」と思った瞬間こそ、自分にディベートを吹っ掛ける必要があるんです。なぜなら、そう思うことが気分と記憶の塊(かたまり)だから。
足立 ロジックとアイデアの順番は、必ずしも同じである必要はなくて「何かいけそうだ」と思うアイデアを出してから、なぜ「いけると思った」のかを検証してみるのも有効です。実は、僕はそちらの順番を推奨しています。
というのも、先にどこをターゲットに設定しよう、何をメッセージとして打ち出そうというのは、そんなに多くのオプションが出てこないんです。なので、僕は「これいけるんじゃないかな」と考えてから、ロジックで検証するというパターンが多いかな。
伊東 そもそも戦略的に何が大事かは分かっているので、アンテナの感度が高くなって、アイデアが浮かびやすくなるんですよね。
足立 そう、それがロジックなんだよね。情報はたくさん得た方が良いと言われますが、結局は限界があるのでフィルタリングしなければいけなくて。そのときに、張っているアンテナにロジックがあるから、一見、関係ないような業界の情報にでも、反応できる確率が高くなるんですよね。
伊東 そうですね。実際にあった例を挙げると、吉野家のような日常食の場合は、お客さんが生活動線上で回遊する店舗に含まれているかで勝敗が決まります。その際に効果的なのは、その人の生活動線が変わった瞬間にアプローチすること。これはロジックですよね。
だから、その瞬間を捉えられるアイデアをずっと考えていました。そんなとき、とある経営者が集まるイベントで僕の隣に電力会社の社長が座ったんです。
そこで、「この人は生活動線が変わる、引っ越しのタイミングを知っているかも」と閃きまして、さっそく「昔はシェア100%だったけれど、今は自由化で大変ではないですか」と話しかけると、「そうなんですよ、1割も取られてしまって」と言うわけです。「おお、9割も知っているぞ」と心が躍りました(笑)。
その会話をきっかけに、引っ越した人に吉野家のデジタルギフトクーポンを配るプランをつくりました。もしあのとき、アンテナを張っていなければ、社長と天気の話だけをして終わっていたと思います。