ほろ酔いマーケティング談義 Tipsy Tips for Marketers #06
「CGM誕生と爆発的成長」 顧客と誠実な対話をする習慣が大事 平成のマーケティングトピック2
3本の電話でオンエア中止?可視化された顧客体験への不満
桃井かおりさんが「世の中、バカが多くて疲れません?」と川べりでつぶやくテレビCMが視聴者からの「不快だ」というクレームでオンエア中止に追い込まれたのが1991年(平成3年)です。
この時、エーザイのお客様相談室に寄せられたクレームの電話は実はたったの3本だった、という噂が広告業界では都市伝説のように囁かれていました。
しかし、当時の情報環境では、果たしてどれだけの数のクレームが世の中に存在していたのか、可視化できる術はありませんでした。今は、違います。
いったいどれだけの人が不満を持っているのか、その会社のこと、ブランドのことを糾弾しているのか、別に高価なソーシャルリスニングツールを使わなくても、単純にTwitterで検索するだけですぐにわかります。
このような顧客体験の可視化もまた、平成の31年間におけるCGMプラットフォームの躍進がもたらした現象です。
さらにはツイッターが時折「バカッター」と揶揄されるように、アルバイト先で食材にいたずらをしたり、器物を損壊したりする行為が、一瞬にして世間じゅうに流布して糾弾され、企業やブランドはその後始末に翻弄される。そんな残念な事象が平成の世では、そして令和の時代に入っても繰り返され、続いています。
一番、記憶に新しいのは、自動車のドライブレコーダーによって捉えられたあおり運転により逮捕された宮崎文夫容疑者です。あの一連の逮捕劇を見た時に、私が思い出したのは
1998年(平成10年)公開のトニー・スコット監督、ウィルス・スミス主演の映画「エネミーオブアメリカ」(原題はエネミーオブステート)です。
この映画の中で描かれていた世界は、国家のめぐらせた監視カメラによって市民のプライバシーなど存在しない、というものでしたが、現実には国家ではなく、一般の市民が所有するカメラや彼らがアップロードする映像によって、あおり運転の行為自体も、また宮崎容疑者の逮捕の瞬間も捉えられ、日本中の人が目撃することになりました。宮崎容疑者が、CGMネットワークの力で日本中の怒りの対象となり、やがてその怒りのうずが国家権力を動かし、逮捕へと至る過程はまさに「エネミーオブステート=国家の敵」でした。