ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #09
SNSでモノが買われる時代、アップデートされるマーケティング・モデル
ユーザー分析から「口コミが期待できるフォロワー」獲得へ
徳力 フォロワーの大半がキャンペーン用アカウントでも、ライバル企業より多ければいいと言われてしまった、ということもありそうです。数値化しづらい「質」が分かりやすい「量」に負けることが頻繁に起きていますが、そうした状況を抜け出すためにはどうすればいいでしょうか。飯高さんでしたら、すでに突破口を見つけているのではないでしょうか。
飯髙 それで言うと、見つけていますね。私は「質」をフォロワーになってくれ、口コミする確率が高い人と定義しています。BtoC商材であれば、画像付きのツイートやInstagramの投稿をUGCと捉えて、この投稿数を指標にしています。
徳力 フォロワー数ではなく、UGCの数をKPIにするということですか。
飯髙 はい、絶対にそうした方がいいと思います。書籍では、菓子メーカーのシャトレーゼの事例を紹介していますが、まずはユーザーインサイトを見て、シャトレーゼのケーキをSNSに投稿してくれる人はどんな人なのか、データをクロス分析しながら口コミする確率が高いクラスターを見つけます。
同じシャトレーゼでも、おいしいから買うという人もいれば、孫が喜ぶから買うという人、アレルギーでも食べられるから買うという人まで、さまざまです。それぞれの属性に対してアプローチを仕掛けてフォロワーになってもらい、口コミをしてもらえる確率を上げていくんです。
徳力 なるほど。では、これまでフォロワー数をとにかく増やすことに集中してきた企業の担当者は、フォロワーをグループごとに切り分けて、こういう目的の人にはこういうアプローチをしたら、こういうUGCが生まれるかもしれないという仮説のもと、PDCAを回すということでしょうか。
飯髙 そうですね。自社の商品に一定の口コミがあるのであれば、まずはそれを分類することがスタートです。次に競合の商品の口コミも同じように分類すると、絶対に自分たちの口コミにない分類が出てくるんです。あとは、その分類の口コミを増やす施策を考えます。
また、まだフォローしてくれていない分類があるのであれば、そのステークホルダーを集めながらUGCを増やすこともあります。
徳力 飯髙さんの著書でも、公式アカウントがユーザーの投稿に「いいね!」を付けたり、リツイートしたりすることを推奨していますが、実際にSNS運用がうまくいっている企業はそういうことを地道にしているんですよね。前回、お話を聞いた上田監督のチームも、本当に丁寧にやっていました。
飯髙 商品を買って公式アカウントがアクションを起こしてくれたら、シンプルにうれしいですよね。映画であれば、その出演者や制作者がアクションを起こしてくれるなんて、普通はありえないことです。でも、それが起きるのが、SNSの一番いいところだと思います。
マーケティングは、当たり前のことを愚直にやるのが一番重要です。キャンペーンでポーンと打ち上げ花火を上げても、入射角と反射角は一緒なので、2日でバズったものは2日で消えてしまいます。しかし、自然発生的に起きた口コミは、なかなか落ちないんですよ。
※後編「無作為に広告を当てて獲得した『いいね!』への違和感。大企業のSNS活用の課題と解決法」に続く
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