ほろ酔いマーケティング談義 Tipsy Tips for Marketers #07
それ、あなたの会社の本当の姿ですか? 中国 NBA騒動が突き付ける、本質を貫くことの難しさ
巨大市場・中国からの反発に、おののくブランドと企業
中国政府への抗議活動が今も続いている、いわゆる香港問題に関して、米国プロバスケットボールリーグNBAの人気チームであるヒューストン・ロケッツのダリル・モリーGMが「Fight for Freedom, Stand with Hong Kong.」(自由のために戦おう。香港と共に立ち上がろう)と35文字のツイートをしました。
そのことに中国政府が猛反発し、中国国営中央テレビは中国で開催されたNBAのプレシーズンマッチの放送を取りやめ、さらに多くの中国企業がNBAとの提携や取引の見直しを行いました。
中国でのNBA人気は大きく、実にアメリカの全人口の2倍にあたる約8億人がNBAの試合を視聴しており、年間で約40億ドル。日本円に換算しておよそ4300億円の市場規模を持つと言われています。
NBAのアダム・シルバーコミッショナーは「NBAは政治的な違いに関する判定を下す機関ではない」 と発表してモリーGMのツイートから距離を置き、スポーツメーカー大手のナイキはヒューストン・ロケッツの関連商品を北京の5店舗から撤去したと報じられています。
ペンス米国副大統領は、こうしたNBAやナイキの姿勢を「中国政府の完全な子会社だ」と痛烈に批判しました。
もっとも、中国政府との覇権争いにあらゆる手段を講じることを厭わない米国トランプ政権の副大統領がこの問題を中立に裁くことのできる立場にあるとは思えませんが。さらに香港の抗議デモに関連して、宝飾品ブランドのティファニーも中国での批判にさらされました。
右目を隠した女性モデルのポーズが香港で右目を負傷したデモ参加者への連帯を示している、と非難され、結果としてティファニーはその写真を削除したのです。
中国でiPhoneをはじめ大規模にビジネスを展開しているアップルも、「地図アプリが警官隊のいる場所を暴徒に知らせている」という批判を受け、そのアプリの配信を停止しました。
現時点においても世界第2位の経済大国であり、今後はやがてアメリカを抜き、世界最大の市場になると見込まれている中国という存在を前にして、企業のポリシーを貫くことの難しさを、今回の香港を巡る中国政府の圧力と企業の反応はあらためて浮き彫りにしました。