ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #11

「ネットメディアの将来が見えない状況を何とかしたい」 医学部出身、新聞社記者・朽木誠一郎の怒り

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無作為に当てた広告で獲得した「いいね!」への違和感。大企業のSNS活用の課題と解決法
ミレニアル世代を代表するビジネスパーソンにアジャイルメディアネットワークの徳力基彦氏がインタビュー。現代のマーケティング担当者が知っておくべき消費者行動やその捉え方を探ります。

第6回は、異色のキャリアを持つ、朝日新聞社 記者・編集者の朽木誠一郎氏。医学部を卒業しメディア運営会社で編集長に就任、その後、編集プロダクションで記者・編集者としての腕を磨き、BuzzFeed Japanで医療専門記者を経験。現在は、朝日新聞社デジタル編集部に所属し、同社が運営するメディアwithnewsや、社内のデジタル領域で活躍しています。ミレニアル世代を代表する記者に「メディア企業で働くことの現在」について話を聞きました。
 

医学部在学中に、ネットメディアの世界へ


徳力 私はミレニアル世代のビジネスパーソンは、それ以前の世代と比べてインターネットに対する感覚が違って、それが「ビジネスにおける感覚にも影響を与えているのではないかな」という仮説を持っています。

1970年代初頭に生まれた私の同世代は、どちらかと言えば、インターネットの先にいるユーザーを「信用できない」と考える人が多いのですが、ミレニアル世代はインターネットの方がリアルで「信用できる」という感覚の人が多い印象です。

特にその分岐点は大学に入学したタイミングにmixi(ミクシィ)があった1986年生まれにあると考えているんです。朽木さんは、1986年生まれでしたよね。

朽木 はい、まさに大学生の頃、mixi上に自分が所属する部活のコミュニティをつくっていました。
朽木誠一郎 氏
朝日新聞社 デジタル編集部 デジタルディレクター
ライター・編集者。1986年生まれ。2014年3月に群馬大学医学部医学科を卒業。2014年4月にオウンドメディア運営企業に入社。同年9月に編集長に就任し、サイトグロースを担当。2015年10月に編集プロダクション・有限会社ノオト入社。記者・編集者として基礎からライティングや編集を学び直す。2017年4月にBuzzFeed Japan News入社、2018年3月に単著『健康を食い物にするメディアたち』を出版。2019年3月に朝日新聞に移籍、引き続きwithnewsなどのウェブメディアで記者・編集者として活動する他、朝日新聞社デジタルディレクターに就任。

徳力 なので、朽木さんがサンプルとして正しいかは分かりませんが(笑)、ミレニアル世代の記者・編集者がメディアをどのように捉えているのか聞きたいと思ったんです。ちなみに、朽木さんがインターネットに初めて触れたのは、いつ頃ですか。

朽木 中学2年生のときなので、1999年でしょうか。映画監督の岩井俊二さんの作品が大好きで、彼がインターネット上で運営していた「円都通信」というサイトの「シナ丼」というシナリオを公募するコーナーに投稿していたんですよ。

徳力 では、インターネットに触れるのは、早い方だったんですね。その後も継続的に使っていたのですか。
徳力基彦 氏
アジャイルメディア・ネットワーク アンバサダー/ブロガー ピースオブケイク noteプロデューサー
NTTやIT系コンサルティングファームなどを経て、 2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視する アプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。2009年2月に代表取締役社長に就任し、2014年3月より取締役。2019年6月末で退任、7月から現職。同月、ピースオブケイク noteプロデューサー/ブロガーにも就任。

朽木 いえ、高校時代は部活と勉強だけで…。大学入学までは触れてもいませんでしたが、ネットメディアの「デイリーポータルZ」は、昔から好きで読んでいましたね。当時のインターネットって、同世代の間ではもっとオタクっぽいというか、アングラとまでは言わないですが、マイナーなイメージのものだったんですよね。友人とは、話しにくいテーマだったんです。

徳力 もう一度、インターネットに深く関わり出すのは、いつですか。

朽木 大学で留年したタイミングです。2浪して群馬大学の医学部医学科に入ったら「目標を達成した」と感じてしまって、あまり勉強しなくなり…。4年生のときの試験がひとつだけ通らず、突然ぽっかりと1年間の空白期間ができました。そこで何をしようかなと思ったときに、中学生の頃に「シナ丼」に投稿するくらい、「文章を書く仕事をしたかった」ことを思い出したんです。

ただ、私は栃木生まれで、茨城育ちの群馬にいる大学生。どうすれば文章を書く仕事ができるのかが想像できず、インターネットで検索したんです。そこで、たまたま募集していた小学館のデジタル事業部にアルバイトのライターとして採用してもらいました。

徳力 何を担当されていたのですか。

朽木 当時は、Yahoo! JAPANのトップページに女性向けWebメディアや生活情報、エンタメサイトの枠があって、そこからのトラフィックを奪い合っていた頃です。シナリオを書きたかったはずなのに、気づいたら「元カレを振り向かせる5つの方法」といった記事をたくさん書いていました(笑)。

徳力 なるほど。大学生のときに、大手ポータルサイトからトラフィックを得る、いわゆるネットメディアの基本構造を学んだんですね。大学生からすれば、小学館のメディアで記事を書くなんて、すごい経験でしたよね。

朽木 はい、当時人気のあった芸人の取材もさせてもらって、舞い上がっていました。そのうちライターの仕事だけで月給が30万円を超えて、6年制なので大学を卒業するまでの3年間続けました。

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