ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #11

「ネットメディアの将来が見えない状況を何とかしたい」 医学部出身、新聞社記者・朽木誠一郎の怒り

広告収入で成り立つメディアを多くつくっても意味はない


徳力 ネットメディアが「メディアとしてのあるべき姿」を突き詰めようとすると、ビジネス的に難しくなるわけですか。既存メディアからネットメディアに移る編集者が圧倒的に多い中で、朽木さんが真逆のルートを辿ったのも、そうした理由があるのでしょうか。

朽木 そうですね。私は、かなり怒っていて。例えば、30代でネットメディアに勤めて年収が額面で600万円という人がいたとして、これはわりと恵まれた方かもしれませんが、ひとりで生きていく分にはいいけれど、将来のことを考えたとき、例えば東京で家族を持って子どもを育てたり、貯金をしたり……というのは、結構しんどいんじゃないかというのが実感です。

いろんな人が「オールドメディアはもうダメだ」と言いますが、ネットメディアはまだまだ発展途上で、環境が良くないところもたくさんある。オールドメディアの編集者がしっかり貯金をしてからネットメディアに移るなら将来の不安は軽減されるかもしれませんが、ネットメディアネイティブだと30代に入ったときに将来が見えないんですよ。だから、この状況を本当に何とかしないといけないんです。

徳力 
朽木さんとしては、どんな解決方法があると思っていますか。

朽木 ひとつ言えるのは、広告収入モデルの無料メディアは本当に、ウミガメの産卵のように成功する例が少ないので、それをたくさんつくる戦略は効率が悪いということ。選択と集中が大事で、成功したメディアにリソースを集中させるべきだと思っています。

個人的には、10人程度の編集部員が所属して年商3億円のネットメディアが勝ち筋。それだったら年収1000万円を切るくらいでなんとか生きていけますよね。これをベースにいかに拡張性を持たせられるかがカギだと思います。

私の問題意識はこのあたりにあるので、今は朝日新聞でどうすればメディア事業をスケールさせられるのか模索しながら取り組んでいるところです。


後編「デジタル時代に『新聞社』をどう残すか。ネットメディアから移籍した朽木誠一郎が考えていること」に続く

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