ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #12

デジタル時代に「新聞社」をどう残すか。ネットメディアから移籍記者 朽木誠一郎の考え

メディアにできることは、まだまだある


徳力 新聞社と組むとき、クライアント企業の担当者は、何を意識すればいいのでしょうか。

朽木 
私はマーケティングに詳しくないのですが、おそらく商品を売ることにフォーカスするのであれば、今まで通りの広告をした方がいいと思います。そうではなく販売よりも手前の段階として「こういう社会を実現したい」「良い社会の仕組みをつくりたい」というときにメディアと組むといいと思います。

徳力 
先日、「ワールドマーケティングサミット東京2019」でフィリップ・コトラー教授が「すべてのブランドは、社会を良くするために活動しなければならない」とお話されていました。そう聞くと、すぐに売上につながらないのではと思ってしまいそうですが、ユーザーがメディア化している現代は社会を良くしようとしているブランドをユーザーが応援してくれるんだ、という話をされていたのを思い出しました。

朽木 
そうですね。持続可能な社会で必要とされる存在でないと、企業も生き残っていけないと思います。おそらく私たちにできることは、まだまだたくさんあるはずです。



徳力 今までのマスメディアの時代は、枠を売るビジネスの手離れがいいし、ある意味分かりやすかったので、そこに特化していた印象があります。広告主であるクライアント企業もその仕組みに慣れていますよね。

しかし、これからのクライアント企業は、自分たちのメッセージを消費者に伝えるための努力を立体的にする必要があるということでしょうか。その場合、具体的にはどんなことをしているのか教えてもらえますか。

朽木 
最初にフレームをつくるべきだと思って、今年はSNSのインフルエンサーの医師チームと共同で、医療情報発信についてのイベントを開きました。そのイベントは医師の方々の影響力のおかげで話題になり、Twitterで「日本のトレンド」に入りました。

もうひとつ、これはwithnewsチームとしての成果ですが、子どもが夏休み明けの9月1日に学校に行けなくなる不登校の問題について、当事者世代に人気の俳優さんや支援者、当事者の方々と一緒に、Twitterで番組配信を実施、約25万人が視聴しました。

個々のイベントの成果はもちろんですが、それで終わりではありません。これらは、社会問題に働きかけたい企業に興味を持ってもらえる事例だと思います。こういうフレームをつくって、ノウハウを蓄積して、それを活用して営業の担当さんが提案の中にそのフレームを入れる。そういう展開ができればいいなと。

徳力 
クライアント側は従来、コンテンツは編集プロダクションにつくってもらい、SEO対策はSEO会社にしてもらい、SNS広告運用は広告会社にといった具合にバラバラに依頼していた印象が強いです。

確かに、それら全てのノウハウを持ったメディアがまとめて請け負ってくれるのであれば、依頼しない手はないですね。

朽木 
はい。新聞事業で積み上げてきたノウハウにネットメディアのノウハウを掛け合わせることで、新聞社がイベントも含めて立体性をつくれると思っています。

もうひとつ取り組む予定なのが、今ある成功モデルのプラットフォーム化です。例えば、オールジャンルメディアとして平均4000~5000万PVと一定規模に成長したwithnewsをさらに進化させるとしたら、今後はそこにバーティカルメディア(特化型メディア)をぶら下げることがあり得るでしょう。

徳力 
朽木さんのお話を聞いていると、パトロンを見つけてからバーティカルメディアを小さく始める方がうまくいきそうな気がしますが。

朽木 
これは編集としての実験になるかなと。資金さえ別の方法で確保しておけば、新しいやり方にも積極的にチャレンジできますから。

結局のところ、withnewsのように成長したオールジャンルメディアを将来的にどうするのかという課題は、絶対に避けて通れません。現時点では、プラットフォーム化により、例えば5000万のPVが1億になるかを試してみるべきだと考えています。

徳力 
バーティカルメディアの立ち上げは、他のメディアでも取り組んでいますが、既存のネット広告とページビューだけを基準に運用するものと、編集部側でビジネスモデルや収支をしっかり考えて立ち上げていくのは、まったく意味が違いますね。

朽木さんの挑戦を応援しています。今日は、ありがとうございました。

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