マーケターズ・ロード 西井敏恭 #02
ドクターシーラボで得たものは、「本当の意味での顧客目線」だった。西井敏恭
2019/12/25
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「顧客目線」は、マーケターとしての財産
ドクターシーラボとオイシックス・ラ・大地。両社に共通するのは、ほかでもない創業者がマーケターであり、だからこそ全社的にマーケティングを非常に重視していることでした。
特に、2007年に入社したシーラボの城野会長(注:城野親德氏。ドクターシーラボ創業者で、現在は取締役会長)は、お客さまの気持ちを推し量り、掴むことに非常に長けた人でした。徹底的・圧倒的な顧客目線の持ち主で、その人の下で仕事ができたことは、現在にも生きる僕の強みにつながっていると感じます。
城野会長がデジタル好きだったこともあり、ダイレクトマーケティングチームは経営と非常に距離感の近い部門でした。だからこそ、会長の徹底的な顧客目線に基づく意思決定を目の当たりにする機会に恵まれました。特に印象的なエピソードとして、配送方法の切り替えを行ったときのことがあります。
これまでお客さまの手元に商品が届くのに3日間かかっていたのが、全国どこでも2日間で届くようになる――その新しい配送方法を2億円のコストを投じて導入するかどうかの判断を迫られたのです。
費用対効果に見合うかどうかなんて、正直わからない。躊躇していると、会長が「そんなのやるに決まっているだろう。早く届かないと、お客さまが困るじゃないか」と一言。
シーラボでは、そんな経験の繰り返しでした。一方、広告に関しては、ほんの20万円程度の出稿であっても、「こんなの元がとれないよ」と一蹴されることがありました。
お客さまのためになる投資は惜しまないけれど、ほかの部分は徹底して締める。これは経営として極めて正しい判断だと思いつつ、当時は「エラいギャップやな……」と圧倒されていました。
いま消費者から絶大な支持を得ているAmazonも、こうした顧客目線に基づく意思決定ができているのだと思います。早く・安く届ける――これを実現するために、Amazonは少なからず利益を犠牲にしているはず。しかし、Amazonが一件一件の配送で利益を出すことに躍起になっていたとしたら、これほど多くのお客さまはついてこなかったと思います。
面白いことに、真にお客さまのためになることをやると、不思議なほどきちんと数字に跳ね返ってくるんですよね。
広告は費用対効果をシビアに見ながら運用するけれど、商品・サービスには投資を惜しまない。それを徹底することで売上・利益を伸ばすことができた経験は、非常に大きかったと思います。「お客さまが本当に喜べば、売上は勝手についてくる」ということを、頭で理解するのではなく、肌で実感することができたのです。
顧客目線が重要だということは、誰もが知っているし、繰り返し口にしますが、本当に実践できている人は本当に少ないですよね。
結局、「とはいえ、費用対効果が……」と言い始めてしまう。その点シーラボは、決して、費用対効果では意思決定しない会社でした。それは、城野会長が医師でもあり、常に患者さんと向き合う立場だったからだと思います。極端に言えば、目の前で患者さんが苦しんでいるときに、売上、利益、費用対効果なんて気にしている場合じゃないわけです。
もちろん、ある程度の予算規模をもってWebマーケティングを管轄させてもらったので、その専門スキルも大幅に向上したはずですが、シーラボで得たものとして最も大きいものは、「真の顧客目線」だったと思います。
西井敏恭氏 オープニングキーノート登壇決定!
「ダイレクトマーケティングの現在と未来。今後3年間で起こるイノベーションは何か?」
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※第3回 引く手あまたのトップマーケター 西井敏恭は、なぜ成果を出し続けられるのか。に続く
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