マーケターズ・ロード 西井敏恭 #03

引く手あまたのマーケター 西井敏恭は、なぜ成果を出し続けられるのか。

マーケティングは、結果しか見られない


 マーケティングは、結果を出してなんぼです。

 5年前に独立した当時のクライアントとのコンサルティング契約が現在も継続していることは、僕の自慢のひとつです。決して安くないコンサルティングフィーを投じて、僕に任せ続けてくださっているのはなぜか。それは、結果を出しているからです。



 結果を出すには、勝てる手段を見つけるしかありません。手段がひとつしかないと、たとえ不利でもそれでどうにか勝ちにいかなければなりませんが、手段が10個あれば、ケースバイケースで一番勝ちやすい手段を選ぶことができます。僕は、手段をたくさん持つことで、勝てるようになったのだと思います。

 外部のマーケティングコンサルタントに求められる重要な役割のひとつに、「クライアント企業でマーケティングを担う人材のレベルを高めること」があります。売上を伸ばすには、卓越した戦略ももちろん必要ですが、それ以上に社員の質が重要なのです。

 クライアント社内に入ってデジタルマーケティングチームを組成し、実践を通じて勉強してもらっています。シンクロを起業した当時は、コンサルティングといえば「戦略立案・実行」をイメージしていましたが、ふたを開けてみると、実際にやっていることは社内教育に近い。実はオイシックスでも、部分的にこういう関わり方をしています。

 この教育メソッドを、より多くの企業に向けて、もっと安価に提供できないか。そう考え、2019年9月に立ち上げたのが、教育アプリ事業 e-Learningアプリ「コラーニング」です。教育サービスには、動画を用いるものが多いように思いますが、動画で学習するのは、実のところ結構パワーがいることです。そのため、シンクロではLINEのようなUIにこだわりました。講師とメッセンジャーでやりとりをするような感覚で、デジタルマーケティングを学べます。

 デジタルマーケティングに「詰め込み教育」は不要。基本的な知識はもちろん必要ですが、それを使ってどう考えるかのほうが重要です。考える力を鍛えるのに、今回のアプリに実装したインタラクティブなUIは最適だと思います。これまでにない社会人向け教育が実現できそうだと、ワクワクしています。



 コンサルティング契約は、ひとつの目的を達成すると「はい、さようなら」となるケースも少なくないと思いますが、僕はお付き合いが何年にもわたって継続することがほとんどです。それは、僕のコンサルティングのスタイルによるところが大きいかもしれません。

 一般的には、コンサルタントとクライアントは「向き合う」関係性にあると思いますが、僕は大体クライアント側にいて、「並んで歩く」イメージなんです。ほぼ「中の人」の感覚で、その時々で浮上してくる多岐にわたるテーマについて、一緒に考えるスタンスをとっています。

 会社では毎年、それどころか毎日のように新たな課題が生まれますから、考えるテーマは永遠になくなりません。そのとき、ひとつのスキルしかなければ、考えられるテーマもひとつですが、僕はさまざまなスキルを身につけてきたおかげで、色々な部門のメンバーとあらゆるテーマについて一緒に考えることができます。

 勝手に思っているだけかもしれませんが、 クライアント企業の社員の皆さんは、僕を“斜め上の上司”くらいに捉えてくれているのではないかと思っています。そのためか、実は業務とはまったく関係ない、人生相談なんかも多いんですよ(笑)。

※第4回 「ひとつのスキルでは、2年で行き詰まってしまう」西井敏恭からの5つのアドバイス に続く

 西井敏恭氏 オープニングキーノート登壇決定!
「ダイレクトマーケティングの現在と未来。今後3年間で起こるイノベーションは何か?」
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