ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #13
衝撃的な上司との出会い、出張先での心停止。コーヒー豆のバイヤーがマーケターへ転身した理由
「UGCの先駆者」との衝撃的な出会い
徳力 買い付け部門からデジタル部門への異動は、珍しいですよね。何か理由があったのでしょうか。
村岡 実は当時、買い付けの交渉に飽きていたんですよね(笑)。そのときに、ネスレのコーポレートサイトのプロダクション選定に、プロジェクト的に加わることになり、初めて揖斐理佳子さん(元ネスレ日本 デジタルメディア開発ユニット ユニットマネージャー)と会いました。
徳力 おお、揖斐さんですか。確か、社長秘書をされながらイントラネットの構築を始めて、その後にネスレ日本の公式サイト「ネスレアミューズ」も担当されていた方ですよね。
ユーザーのクチコミ投稿を公式サイトに掲載するという、当時としてはあり得ないほど早くUGC(User Generated Contents=ユーザー生成コンテンツ)に取り組まれていたことを覚えています。いい師匠に恵まれましたね。
村岡 はい。それで、そのプロジェクトが始まる前に、揖斐さんから事前資料がメールで送られてきて「目を通してください」と。当時の私は、まったくデジタルの知識がなくて、揖斐さんから「質問は、ありませんか」とメールが来たときも、よく分からないので「今のところないです」と返信したら、揖斐さんから「興味がないんですか、それとも勉強不足ですか」と返ってきて…。
「やる気がないと思われてしまった!」と焦りました(笑)。そこから自分で学ばないとダメだなと思って、本を買って読み漁りましたね。
徳力 それまでは、デジタルにはあまり興味がなかったんですか。
村岡 というよりも、バイヤーという立場でしたので、周りが勝手に情報をくれていて、私自身が受け身だったんです。あとは当時、ドワンゴの「ニコニコ生放送」で党首討論が行われているのを見て、これからはデジタルにきちんと取り組まないと生きていけないなと危機感を持っていたんです。
その後に、デジタル部門で人員募集があったので、すぐに手を挙げました。会社からは「お前、何考えているの?」と言われましたけど(笑)。
徳力 すごいな。バイヤーからデジタルに転身というのって、もはや転職に近い判断ですよね。個人的にパソコンが好きだったわけでもなく、それまでデジタルにも全く関係がなかったんですよね。
村岡 はい、むしろ苦手でした。そうして異動した初日に、揖斐さんから「アンケートフォームでキャンペーンをつくりなさい。それで、そのアンケート結果を全部読みなさい。そうじゃないとユーザーの気持ちは分からないから」と言われて。
それで、すぐに実施して回答を全部読んだところ、揖斐さんから「どう思ったの?」と聞かれて、私がサマリー程度の答えしかできないでいると、揖斐さんから「そうじゃない」と一蹴されたことを覚えています(笑)。そのときは、ユーザーのインサイトを突いた答えができなかったんですよね。